こんな本読んだ - 『知的複眼思考法―誰でも持っている創造力のスイッチ』(苅谷剛彦)
知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)
- 作者: 苅谷剛彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05/20
- メディア: 文庫
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ふと思い立って、本棚の奥に埋もれていたのを引っ張り出してみました。
以前読んで心に残った箇所を書き留めておきます。
学生たちと議論していると、しばしば、抽象的な概念をよくこなれないままに使っている例に出会う。「構造」とか「個性」とか「人間形成」とか「権力」といったビッグワード(概念)が典型的な例である。もともとの概念の定義とはお構いなしに、何となく理解しているレベルで、こうした難しい言葉を使ってしまう場合も少なくない。(中略)
その結果、こうしたキーワードは、容易にマジックワード(魔法のことば)に変わる。つまり、魔法の呪文のように、人びとの考えを止めてしまう魔力を持っているのだ。(中略)
これらのことばを使うことで、「なんとなくわかったつもりになる」場合が少なくない。これらは、使われる文脈を離れて、一人歩きをするビッグワード、マジックワードといえるのだ。(中略)
そこで、このようなことばを使用禁止にして、問題を考えてみる。(中略)
「バブル経済」とか「バブルの頃」といった、少し前の時代のとらえ方もそうしたマジックワードになりつつある。厳密な定義なしに、80年代後半の土地投機に絡む好況期をこう呼ぶことで、その時代に起きたことがらで現在に影響を及ぼしていることを皆「バブルのせいだ」とみなしてしまう傾向がある。こういうときには、「バブル」ということばを禁止語にしてみると、ほんとうにいいたいことと、何となく雰囲気で伝わっていることの違いが見えてくるはずだ。
複眼思考のためのヒント - 禁止語のすすめ 242頁 (太字は引用者)
とらえどころのない、いかようにもとらえることのできる抽象的なことばを筆者は「マジックワード」と定義。
口当たりがよくて一見人口に膾炙していることばほど、使うときと場所を選ぶ、あるいは自分自身がそのことばを理解しているかどうかが問われると、安易に口走ることを戒めます。
2007年の今なら「Web2.0」とか「格差」とかがぴったりマジックワードに当てはまりそうな感じですね。
身軽に動けて、広く深いネットだからこそ
この本を読み返してふと呟きたくなったことを、少しだけ自戒を込めて。
- すべてを思いどおりに伝えられることはできないとしても、中にあるものを噛み砕いて伝える努力を惜しんではいけない。あちら側が見えないネットだからこそ。
- わからないなら、背伸びせずにわからないと言っちゃえばいいじゃないか。リアルよりはるかに身軽なネットだからこそ。
- まだ言葉にしえないもやもやがあるのならば、立ち止まってしばらく考えてもいいじゃないか。いつでもつながれるとは限らない、雑多で孤独なネットだからこそ。
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- //b.hatena.ne.jp/entry/http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2006/05/post_0cc9.html">:本書で記されていた「批判的な読書をする方法」について詳しく解説されています。