頸城 小谷温泉〜天狗原山南西尾根(山スキー、1730mまで)

土曜日、長野県の小谷温泉から頸城の「天狗原山」につながる尾根をほんの少しだけ見てきました。
めまぐるしく変わる春の天気と雪質を体感できた一日でした。
メンバーはhatayasan、Asa、Kajの3名です。

GPSログ(クリックで拡大)

  • 赤が登り、紫が下り。林道から夏道に合流するまでの尾根は藪の濃い急斜面の膝ラッセルだった。
  • 今回は複雑な尾根に入りかけたところで退却。この尾根の核心はさらに向こう、1949ピークの周辺にありそうな気がする。
  • 登山口から栃の木亭までの登りのログが途切れているのは、GPSのセンサーをオフにしていたことに気づかなかったため。

記録と所感

2007年3月23日(金)

新潟県南部の降水確率は土曜70%、日曜80%。木曜になっても変化の兆しがない予報が恨めしい。
ただせっかく山のために確保した休日である。次につながる感触を少しでもつかめればと思いつつ夜の北陸道を走る。

  • 28:00(3・24 4:00) 小谷温泉手前覆道
    • 糸魚川ICを降りて市街へ曲がって24時間営業のマックスバリュで朝食や行動食やらを仕入れる。
    • 「熱湯」の分岐の手前のシェッドで通行止。夜が明けるまで2時間程度仮眠する。
2007年3月24日(土)


栃の樹亭。ここから右に林道を歩き始める。

夏道に合流すると、尾根は一変なだらかになる。

雪庇の張り出す標高1600付近。

岩峰のそびえる1741ピークの手前で退却とする。

下部は濃い藪を縫っての藪スキー。

林道。しとしと降る雨が冷たかった。

  • 6:00 起床
    • 午前中は天候は安定しているとのこと。用意してきた幕営装備は一式車にデポして日帰りの装備で行けるところまで行ってみることにする。
  • 6:55 小谷温泉手前覆道 出発
    • 後立山連峰まで見渡せる雲一つない無風の快晴。午後から荒れるなんてにわかに信じがたい。朝なので路面には氷が張り出している。除雪は栃の樹亭まで続いていた。
  • 7:35-7:45 栃の樹亭
    • 除雪終点。だが人の気配はしない。ここからようやくスキーを履く。
  • 8:40-8:50 1055P東
    • 緩く下って緩く登る。谷を回り込んだところで尾根に取り付く。途中2箇所ほど地面ごと崩れており慎重に通過する。
    • 栃の樹亭から続いていた一条のトレースは林道のさらに奥まで伸びていた。
    • 1:25000図を読む限りそれほど困難はない尾根のように思えたが、思いのほか藪が濃く尾根が細い。
    • 濃い藪の急斜面はスキーを担いでツボ足の膝上ラッセル。Asa氏と僕が交替でトレースをつけていく。
    • このルート、愚直に尾根伝いに登るとどうやら「はまる」ようだ。急な斜面で枝を掴んで身体を起こすも担いだスキーが枝に引っかかって進ませてくれない場面もあり苦笑いしてしまう。
  • 12:25-12:40 1741ピーク手前(1730m)
    • なだらかな尾根に出た。赤布はついている。夏道に合流したようだ。雪を踏みしめるとキュッと音が鳴り出す。雪質が心なしか変わってきたようだ。
    • 巨大な雪庇を通過。ここは緩いアップダウン。林も少しずつ疎になり心地よい滑りを予感させる。
    • ところが足取りが突然重くなる。シールが異常に効くように感じられどうしたものかとスキーを見遣ると厚さ10cmほどの雪がシールにこびりついていた。下駄である。
    • 湿った雪で濡れたシールに乾いた雪がまとわりついているようだ。トップを交代しながら雪を蹴散らすようにスキーを跳ね上げながら進むほかなかった。
    • 午後に入ると雲行きが急速に怪しくなってきた。南から風が轟々と吹き始める。残念だが予報のとおりだ。
    • さらに困ったことにぱらついてきたのは雪ではなく雨。標高1600mを超えているが西から低気圧が張り出すとこの時期でも雨なのか。
    • 登ってきた道をほぼ道沿いに下るならば、藪スキーで消耗は必至。ここはまだ余裕のあるうちに切り上げた方が賢明かもしれない。支尾根が派生し始めた1741ピークの岩峰の下でザックを下ろし行動食を充填。登るのはここまでとする。
    • 濃い藪を下り巨大な雪庇沿いに軽くアップダウンしたあとシールを外す。降り出した雨で雪は水を含んですっかり重くなってしまった。踏ん張らないとスキーが思うように曲がってくれない。ふわふわした新雪とは対極にある、なんともコシのある雪だ。
    • 下部は急斜面の中の藪スキー。キックターンと斜滑降を繰り返して地道に高度を下げるのみ。先頭を行くAsa氏はあっという間に視界から消え去ってしまった。初めてご一緒させていただくKaj氏も辛抱強くスキーを操られる。
  • 15:00 林道トレースに合流
    • 雨はぱらぱら、午前中澄み切っていた展望はなく山腹には重苦しい雲が垂れ込めている。
  • 15:35-15:40 栃の樹亭
    • 最後の登り返しでシールを貼りなおして栃の樹亭へ。しばらく道路の左脇をスキーで進むことができた。
  • 15:55 村営雨飾荘
    • 無料の露天風呂は休止中。天然の温泉が湧き出しているわけではなく蛇口が閉められているようだった。
  • 16:05-16:10 小谷温泉山田旅館
    • 従業員の方に温泉に入れないか尋ねたところ「県道が土砂崩れを起こす危険が高いため、営業することができない」とのこと。「もし斜面が崩れて帰れなくなっても承知のうえでなら、どうぞ」。リスクを背負う覚悟のうえならば、いちおう500円で風呂には入れていただけるようだ。
    • 栃の樹亭や雨飾荘に人の気配がしない理由がわかった。公式には、ここに住んでいる人でなければ林道を通ってはいけなかったのだ。
    • 最後は通行止めの土のうを乗り越して駐車地点へ。泥水が滝のように滴り落ちている。行きに通ったときより土砂が多く堆積しているような気がした。
  • 16:15 小谷温泉手前覆道 到着
    • ザックもアウターももうずぶ濡れ。覆道で雨をしのげたのはせめてもの救い。
    • 次第に雨が強まるなか通行止めの土のうを越えて片道5分山田旅館まで往復するのも躊躇われる。風呂あがりにのんびり過ごしたい思いが勝り、国道148号線上の「道の駅小谷」併設の温泉「深山の湯」まで移動する。
    • さて25日はどうしようか。いくつか絵を描けそうな気もしたが、台風が接近したときのような吹き降りの雨を窓越しに眺めていると「もう、いいかな」という気がしてきた。日曜はゆっくりドライブを楽しむことにする。
2007年3月25日(日)


ト伝の湯(ぼくでんのゆ)入口。国道158号線の上高地の分岐付近にある。

  • 一日かけて信州・飛騨周りで帰る。
  • 安曇野の名水をいただいた後は国道158号上高地方面入口脇の洞窟の露天風呂「ト伝の湯」を試してみる。*1
    • 薄暗くて狭い洞窟に濁ったかけ流しの温泉が湧き出すワイルドな雰囲気。浴槽のみで水道の蛇口などはない。
    • 小屋でくつろいでいる間に、タクシーやバスから吐き出されたハイカーの集団が釜トンネルに向けて歩いていく。小屋の主人に聞くとこの日は70名ほど上高地入りするツアー客がいるとのこと。
  • 安房トンネルを抜けると平湯温泉スキー場はまだ営業中。路肩にもまだ1m近い積雪があった。
    • この日の平湯トンネル入口の気温は6度。新雪は望むべくもないがまだまだ滑れそう。
    • 猫岳第三尾根の登山口である久手牧場には幾条かのスキーのトレースが認められた。
  • 高山市内に入り国道41号線を南下、2週間前に寄った飛騨高山の食堂「食事処鳥海*2」へ。
    • この店は単なる大盛の店ではない。オーナーが鳥海山に特別の思い入れがあるのだろうか、至るところに飾られた鳥海山の四季の写真や絵画が山屋の旅心をいたく刺激する。
    • 「海老フライ・蟹コロッケ・ヒレカツ・刺身・冷やしおろしうどん・フルーツ・小鉢・御飯・漬物・味噌汁」がセットになった「鳥海定食」にチャレンジ。カラッと揚がったサクサクの揚げ物、コシのある稲庭うどん、お代わり自由のごはん、昼食には異色の刺身、お口直しのフルーツ。もはや山帰りの癖になりそうです。
  • 携帯電話に流れてきたメールで、石川県能登地方で10時前に震度6強地震が勃発したことを知る。
    • さらに、昨日まで入山していた妙高エリアは震度4だった情報も入ってくる。雪の緩んだ春山で強い地震。下手すれば雪崩に巻き込まれてもおかしくなかった。早めに下山しておいてよかったと一同胸をなでおろす。
  • 国道41号線を飛騨川沿いに快適に流し、美濃加茂ICから東海環状道に乗る。英気を養えた週末でした。

反省

  • ドカッと積もった新雪が1週間後にはグサグサに腐り始めていた。標高が高く雪の豊富なエリアとはいえ、春の寒暖の差は尋常ではないようだ。
  • 頸城の天狗原山〜金山に至る「金山南西尾根」は支尾根や擬似ピークが所々派生、見定めた方位に登るだけでピークに着ける山ではないことがわかった。天気が荒れて「はまる」前に退却したのは正解だったように思う。
  • 読図の基本に従って尾根を確実にトレースしてみたところ、濃い藪とやせ気味の急斜面の通過に思いのほか手を焼いた。効率よく登るなら尾根沿いの脇の疎林をあざとく縫うのもありなのだろうが、このルートの周辺を熟知していなければ難しいだろう。
  • 足りないものを突きつけられるのは苦い経験ではあるけれど、自分自身の実力を測るにはトレースのない山に向かうのがいちばん手っ取り早いことを再確認した。
  • 昼闇山(ひるくらやま)といい焼山といいこの天狗原山といい、頸城には魅力的なだけでなく一癖もふた癖もある味のあるピークがひしめいている。地道に通いつづけていれば、いつか晴天にまみえる日も来るだろうか。

個人的なメモ

  • 春の雪で濡れるとシールの粘着力が著しく落ちるのは何とかならないものだろうか。MagicMountain製のシールにCollTex製の接着剤を塗っているのだけど、メーカーの相性のようなものがあるのだろうか。

*1:釜トンネルの入口の小屋で受け付けている。入浴料700円。1組あたり30分の時間制。観光シーズンには待ちができるほど人気の温泉だそうな。話のタネにはなるかも。

*2:腹を空かせた山屋のためにあるような店にもかからわずウェブではほとんど話題になっていないみたい。拾えた目ぼしい情報は「飛騨高山タウン情報誌さるぼぼ倶楽部さるぼぼ倶楽部/グルメガイド VOL.115」のページ途中の解説くらい。