こんな本読んだ - 『ウェブ汚染社会』
- 作者: 尾木直樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/01/23
- メディア: 新書
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いまどきの小中学生や高校生がウェブをどう使っているか、現場ではどのような問題が起きているのか。
まとまった資料にこれまで目を通したことがなかったので、この機会に手に取ってみました。
前半はゼミの調査結果から導かれたことを数字で報告、後半は子どもを守るための教育論。押さえておきたいのは前者。
著者・尾木直樹氏は教育評論家。1997年の神戸児童連続殺傷事件関連では、宮台真司氏と共著で『学校を救済せよ―自己決定能力養成プログラム』という本を著されています。
以下、気になったポイントを箇条書きで。
ゼミの調査結果から
- 中学生の6割、高校生の9割がケータイのメールを使っている。
- 中高生にとってケータイは「話す」よりも「打つ」ツール。
- 中・高校生の2割が、見知らぬ人やネットで知り合った人と日常的にメールやチャットを楽しんでいる。
- そのうち2割から3割が「実際に会ったことがある」。さらにその半数は「会って楽しかった」と答えている。
- いわゆる「無法地帯」に子どもを野放しにしていることと同じ。
- 中・高校生の1割が、ネットで別の人格になりすましたことがある。
- 偽名、ネカマ、なりすまし。意識せずに気軽に楽しんでいる。
- 中学生の7割、高校生の9割が2ちゃんねるの存在を「知っている」。
- 書き込むのは高校生より中学生が多く、PCを持つ1割は「よく書き込む」。
急がれる情報教育
- ネット、メールの危険性は「直接的被害」と「間接的被害」の二つに大別できる。
- 早い時期からWebを始めた子どもは、平均よりも長時間Webを利用し、バーチャルなコミュニケーションを抵抗なく行っている。
- 心理学の研究では「メール交換、掲示板、チャットの書き込みが多い生徒ほど性格が攻撃性を増す」ことが明らかになっている(42頁)。
- 教育関係者のインターネット教育への意識が薄すぎる。
- オークションや出会い系サイトでは子どもたちはもはや「加害者」の立場に回っているケースが珍しくない。
- 今の教育プログラムは子どもを被害者としてしかみなしていないため、現実と乖離が生じている。
学校や家庭にいながらにして有害な情報に子どもがアクセスできる環境を大人が許していることへの危機感を、筆者は「ウェブ汚染」という言葉で表明しています。
ネットの速すぎる進化を前に、教える側の大人が子どもの順応能力についていけていないことも、事態をさらに深刻なものにしているのかもしれません。