はてブの集合知の向かうところ〜愚にもつかない「衆愚」考
「BLOG STATION:「はてブの衆愚化」について考える 」からトラックバックをいただいた。
たしかに、何をもって「はてブが衆愚化しているか」自分自身の考えが詰めきれていないと気づいた。
ソーシャルブックマークに期待されたもの
ひとまず「衆愚」という言葉は脇に置いて、原典に立ち戻って「伊藤直也のアルファ・ギークのブックマーク:多様化する個を集めて新しい価値を生み出す「Wisdom of Crowds」」を読んでみよう。
はてブの開発者である伊藤直也氏は、ソーシャルブックマークに「『個が独立、分散して多様性を発揮しながら創り上げたものが集約されてより大きな知恵が生み出される』というWisdom of Crowdsの方程式」を期待していると記している。
これを踏まえて、「知恵の形成を阻むもの」を「ノイズ」ととらえて、それらがユーザにもたらす利益の多寡を考えてみればどうだろうか。
はてブで起きている「ノイズ」を書き出してみよう
- ブクマスパム
- botユーザの参入
- はてブには、定められた順序に従って規則正しくブックマークするユーザが存在する。
- これは人間ではなくそのような規則に基づいて動くよう仕込まれたプログラム、「bot」である。
- botのはらむ問題については、「「naoyaグループ - naoyaの日記 - ブックマークの bot 問題 」でさらっと語られている。
- 代表的なbotユーザは、古くは「b:id:jnaoya*1」、今は「b:id:j708*2」。
- b:id:jnaoyaをお気に入りに登録しているユーザは49人、b:id:j708は47人*3。「ジャンルにかかわらず注目のエントリーの閾値周辺の情報を収集したい」需要は少なからず存在しているのだろうか。
- ただ、ブックマークを記事への評価として考えたいと感じる大多数のブロガーにとっては、botはノイズ、意味のない「下駄」であると貶す見方が圧倒的だろう。
- はてブのコミュニティ化
- はてなブックマークのコメントでコミュニケーション、会話をすること。(コメント中に「↓」や「↑」といった文字が出てくるとその可能性が高い)
- ブックマークのコメントで会話できることは新たなはてブの楽しみ方を知ることにつながる。
- しかし、これが度を過ぎると「クネクネ」「馴れ合い」と冷ややかに見なされることがある。コミュニケーションを楽しんでいる当事者間以外にはこれらの会話やブックマークが必ずしも有益とは言い切れないからだ。
- はてブが過度にコミュニティ化することへの懸念については、「Discommunicative - はてブのクオリティを低くしているのははてな村の連中だ」の記事が、率直に思いを表現している。
- ライトユーザの増加
- 「人気エントリー」「注目のエントリー」に上がった記事を主にブックマークするユーザ。
- はてなブックマークを情報収集の道具として使うならば、最も手堅く効率的な使い方ではある。
- ただ、メジャーなサイトにブックマークが集中したり、旧来のはてなユーザの発掘した記事に新たなユーザが過剰に乗っかると、はてブユーザ好みの似たり寄ったりの記事しか人気エントリーに姿を見せなくなる。
- 「GIGAZINE問題」は、この現象を見事に言い表したものだろう。
- いわゆる「GIGAZINE問題」については、「ekken♂ : これであなたもGIGAZINEになれる! ……かも 」に詳しい。
- この現象をどのように呼ぶかは、言及するブックマーカーのキャリアや価値観によるところが大きく、一様に括ることは難しい。
- ただ、現在はてブ界隈で語られる「衆愚」が、この現象を現していることはほぼ間違いない。
- ユーザの価値観の多様化
集合知の向かうところ
以上、はてブ上で起きている「ノイズ」を書き出してみた。
単純に、ユーザへの利益という切り口で見てみると、
スパム < bot < コミュニティ化 < ライトユーザの増加 < 価値観の多様化
という見方ができるだろうか。
こう紐解いてみると、誰にとってはてブが「衆愚化」しているのか、前提が共有されていないままで負のイメージが独り歩きしている部分があることに気づく。どうも「衆愚」という言葉にはセンセーショナルな響きがあるようだ。
今起きている現象をかみ砕くと「はてブがメジャーになりつつある中で当初予期しなかった使われ方が出始めている」「単一のコミュニティでWisdom of Crowdsを成り立たせるためには、はてブは大きくなりすぎている」、くらいにほぐせるだろうか。
前回の繰り返しだけど
では、「ノイズ」から逃れるにはどうすればよいのだろうか?
それはやっぱり自分向けの情報収集の環境を手っ取り早く作ること、お気に入りを上手く使うことですよ、と前回書いた記事と同じ結論に落ち着くのだが、幅広いユーザに「お気に入り」の機能にリーチしてもらうにはまだUIに工夫の余地があるのかなあ、と愚にもつかないことを繰り返しつぶやいてみる。