白馬 唐松沢 - 天狗沢 - 大出原 - 猿倉 - 八方(山スキー+自転車)

5月4日(日)は、白馬の唐松沢と大出原の様子を見てきました。
メンバーは単独です。

GPSログ(クリックで拡大)

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  • 八方尾根のゴンドラを使って唐松沢を滑降、天狗沢を登り返したあと鑓温泉、小日向のコルを経由して猿倉を目指しました。
  • 猿倉から八方第5駐車場まではMTBを使いました。

報告と所感

2008年5月4日(日)

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八方尾根を朝一番のゴンドラで。
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白馬三山。左から鑓ヶ岳・杓子岳・白馬岳。
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五竜岳
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唐松山荘。
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頸城の山々。焼山・火打山妙高山
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稜線に着くと立山がそびえていた。
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剱岳が出迎えてくれた。
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唐松沢の源頭。
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切り崩されていたテラスで出発の準備をした。
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安全地帯まで一気に滑り降りた。所々でデブリが出ている。
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ピントを合わせる時間をもどかしく感じた。谷の底には日本離れした景観が広がっていた。
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天狗沢の出合まで高度差1100mのスキーを楽しむ。
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雪も適度に緩み、小気味よくスキーが走ってくれた。
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天狗沢出合に到着。ここから標高差1000mの登り返し。
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デブリの上を歩く。長居するにはあまり向いていないようだ。
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シールで歩けたのは出合から標高差100m上くらいまでだった。
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標高2000mでアイゼンを履く。手も使いながら一歩ずつ登っていく。
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両側の壁から滝が出ていた。小さな落石や雪崩が谷にこだまする。
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シュルンド*1を避けて登っていると、コルより上の稜線に追いやられた。既に16時を過ぎている。
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唐松岳方面。中央のくぼみ(コル)からドロップした。拡大すると斜面を横切った跡が見える。
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八方尾根。なだらかな尾根から急斜面が派生している。
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日も傾いてきた。雪が硬くなる前に下ってしまおう。
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左端の稜線から滑り始めた。小さな面発生雪崩を起こしてしまっている。
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烏帽子岩付近。コルには登り返さずに鑓温泉へ一直線。
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烏帽子岩付近から白馬の街を見下ろす。里は夏の気配すら漂う。
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八方池山荘。八方尾根も下のほうは雪がなくなっていた。
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鑓温泉。テント泊のスキーヤーが1人いただけだった。
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小屋の下では、温泉が滝になって湧き出していた。
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誰もいない大斜面を標高差900m楽しませていただいた。
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小日向のコル。テントがちらほら。ここまで来れば大丈夫。
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18時前に猿倉へ。作戦成功。
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猿倉からはMTBに跨って高度差500m弱の下り。季節の変わり目を肌で感じることができた。


八方尾根のゴンドラの運行時間に合わせて5時半の起床*2
近くのコンビニに立ち寄りUFO(大盛)、カップヌードル(大盛)、昨夜地元のスーパーで仕入れたあんぱん(1袋)、芋けんぴ(1袋、200g)、暴君ハバネロ(55g)、野菜生活100(900ml)を掻き込んでエネルギーを充填。
ゴンドラ乗場は八方第5駐車場から15分弱歩いたところにある。
乗車券の順番待ちをしているとお世話になっている方に偶然出会う。3日に八方尾根の斜面を下見のあとこの日は唐松沢方面を目指されるとのこと。八方池を過ぎた標高2300m付近までお話しながらご一緒させていただく。
八方尾根の最後は心持ちやせ気味になり、2500m付近でスキーを担ぐ。
尾根を登り上げると立山剱岳が出迎えてくれる。今回考えている唐松沢の入口は唐松岳山荘と唐松岳の間にあるコルになる。恐る恐る覗き込むと右側には雪庇も小さく張り出しておりなかなかの高度感。幸い左側にツボ足で唐松沢を登ってきた登山者が作ったと思われるテラスが残されておりそこで準備をする。
雪の状態はグサグサでもない適度な緩み具合。ビーコンは正常に動いているだろうか、兼用靴の締まり具合は大丈夫だろうか、ザックの荷重は左右適度に分散されているだろうか。ひととおり思いつくところを確かめて斜面に足を踏み入れる。
出だしは45度を超える急斜面。もとより僕のスキルでターンを決められるはずもなく初回は斜面を大きく横切ってみる。水を含んだ重そうな雪が静かにずり落ちていく。雪崩というほど大きい流れでもないが巻き込まれると身体を動かすのは難しそうだ。流れが止まるのを待ってもう一度斜面いっぱいに横切ってみる。
斜滑降を2回も繰り返せば僕でも何とかなりそうな斜度に落ち着いてきた。谷の開ける地点まではデブリもなく一気に高度を落とす。
後ろを振り返る余裕がようやくできた。鋭く屹立した後立山連峰にあって開放感とスケールを感じさせる見事なU字谷。ピントを合わせるのをもどかしいと感じるくらい夢中になってシャッターを切る。
唐松沢は思いのほか長く続く。源頭から1100m標高を下げてようやく登り返し地点の天狗沢出合へ。
出合からいきなりひどいデブリが横たわっている。天狗沢を降りてきた単独の山スキーヤーに尋ねると、標高2000m以上は雪の走路のような地形が既に姿を現しているとのこと。
ものの本には天狗沢の源頭までシールで登れるとあった*3が、実際にシールを使えたのは標高1650mくらいまで。年や時期によって状態も変わってくるのだろう。標高2000mから上は斜度も急になりアイゼンを履く。
谷は別れて次第に幅を狭めていく。滝の上から小さな石が落ちる音がこだまする。
斜度が増してくるとシュルンド*4が顔を覗かせる。午後になると雪の状態も緩み前後の状態は不安定に。面に負担を与えないよう、上半身の丈ほどあるギャップを四つんばいになって何度か乗り越える。
朝に少なく見積もっても3000kcalは充填してきたのだがここに来て腹がぐうぐう鳴り始める。180gで180kcalのゼリー飲料を口にして疲労の回復を図る。
コルを目指す最短距離のルートを取るつもりでいたがシュルンドを乗り越すのをためらっていると西の斜面に追いやられてしまう。最後の標高差30mの登りは雪が溶けておりガレガレの岩稜の登り。一歩進めば手を置いていた岩が剥がれ落ち足元の砂礫が音を立てて流れ落ちていく。ハイマツや木の枝のあるところだと今度はスキーが引っかかって思うように進めない。一箇所サッカーボール大の岩が手元から崩れ腰の左側におもむろにぶつけてしまう。頭や肩でなくて助かった。
天狗沢の右俣源頭とでもいえばいいのだろうか、唐松沢の出合から4時間近くかけて天狗沢を登り切る。既に16時過ぎ、日が傾き始めている。
稜線からの眺めは胸がすくよう。これまで歩いてきた白馬の街、八方尾根、唐松沢の様子だけでなくこれから向かう鑓温泉、小日向山方面の眺めもよい。これならヘッドランプを出さずになんとか車に戻れそうだ。
稜線からの滑りは開放感あふれるもの。唐松沢のように緊張を強いられることもなく空を飛んでいるような感覚。雪が固まり始まる前に早く下ろう。
鑓温泉を通過して六右衛門滝上部の登り返しまで誰もいない大斜面を標高差900m満喫。ここからはトレース沿いにスキーを走らせるだけ。
小日向コルからの下りで1箇所谷におびき寄せられそうになったが、18時前に猿倉へ。前日にデポしておいたMTBと無事再会する。作戦成功。
猿倉の駐車場は7割程度の入り。連休の割には余裕があるのだろうか。
スキーとストックを背負ってMTBに跨り、対向車に注意しながらブレーキを効かせて下っていく。標高を下げるほどに感じる風は暖かくなっていく。二股で記念撮影のあとは八方へラストスパート。
八方第5駐車場では、杓子岳のジャンクションピークを滑ったIWAさん一行がバーベキューを楽しまれているところだった。
道迷いで40m登り返した分も含めると、人力で稼いだ標高差2,030m、スキーで滑った標高差2,615m、自転車で下った標高差は495m。長い一日が終わった。

そのあと

お供えしてきたもの

それに気づいたのは完走の喜びに浸って落ち着こうとしたときだった。
ザックの中身を取り出したときに、いつも必ずあるものがない。
天狗沢を登っている途中、ペットボトルから水が漏れていることがわかり、荷物が濡れていないかザックの中身をすべて改めたことをはっと思い出す。そのときに戻し忘れていたのか、戻した後天蓋を閉じるのを忘れていたか、はっきりしたことはわからない。
どうやら、財布と携帯電話をまるごと山にお供えしてしまったようだ。
残念だが、今回のツアーをこれ以上続けるのは難しくなった。余韻に浸る間もなく冷や水を浴びせられたような、複雑としか言いようのない心境だ。

忘れられない一日

この夜はIWAさんたちの集まりに混ぜていただくことができた。
ほぼ初対面にもかかわらず温かいお気遣いをいただいたIWAさんritzさんibukiyamabcさん、た〜とるさんはじめみなさま、ありがとうございました。
5月4日は、これまで山スキーをやっていて忘れられない一日になりそうです。

2008年5月5日(日)

5月5日(日)は、一日使って北陸回りで下道で自宅へ。5月6日(月)は諸々の届出や手続きに費やした。

コースタイム

  • 5:30 起床
  • 7:30 八方ゴンドラ乗り場
  • 8:05-8:10 八方ゴンドラ頂上(1835m)
  • 9:05 八方池(2070m)
  • 10:55 唐松山荘(2640m)
  • 11:00-11:25 唐松沢源頭(2600m)
  • 12:00-12:05 天狗沢出合(1490m)
  • 16:03-16:15 天狗沢右俣源頭(2552m)
  • 16:29 烏帽子岩の西側(2120m)
  • 16:31 鑓温泉(2010m)
  • 16:45 六右衛門滝上部(1615m)
  • 17:16-17:22 小日向コル(1824m)
  • 17:55-18:12 猿倉(1240m)
  • 18:21-18:25 二股(832m)
  • 18:30 八方第5駐車場(745m)

*1:雪の割れ目

*2:GWは7時半から運行を開始していた。片道1400円+荷物を持った登山者は荷物代400円が別途必要。

*3:今回のルートは『ハイグレード山スキー―最新ルート集(2007)』の「後立山連峰東面ロングワンデイルート」を参考にしました。

*4:クレバスの小さなもの。氷河や雪渓にできた割れ目のこと。