2932m→0mの山歩き - 白馬岳→栂海新道→親不知


山のてっぺんから海へ行こう。
9月23日(金)から25日(日)まで、北アルプスの栂海新道(つがみしんどう)の様子を見に行きました。

記録

9月22日(木)

以前から気になっていた栂海新道を歩いて白馬岳から日本海を目指してみることにした。山で1泊以上するのは何年ぶりだろうか。
仕事のあと21時過ぎに自宅を出発。京都から中央道・長野道を走って豊科で下車。
大町市のコンビニで1時間ほど力尽きたあと3時に栂池高原中央駐車場に到着。3時間ほど眠る。

9月23日(金)


小蓮華山に続くなだらかな道。

白馬岳山頂2932m。ここから日本海に向けて歩き始める。


6時に目を覚ます。駐車場の巡視員さんに3日分の駐車料金900円を払ってゴンドラ乗り場へ。
乗車券を買う前に登山届を提出。「栂海新道を歩く」と書くと受付のスタッフから「まあ、ぎりぎり行けるか」。聞くと昨日白馬岳で初冠雪、小蓮華山まではうっすら白くなったとのこと。
荷物の総重量は17kg。夏山装備でテントを省略して食糧を3泊4日分担げばこの程度だろうか。
7:36、ゴンドラが動き始める。折からの雨で点検が入って30分遅れとなった模様。
8:16、ロープウェイを乗り継いで栂池自然園を出発。樹林帯のなか高度を稼ぐ。途中で軽装の登山者にあっという間に抜かれる。トレイルランニングというやつか。
9:30、白馬乗鞍岳。曇ってはいるが展望はある。
9:50、白馬大池山荘。雨水を汲ませてもらえたのでペットボトルの水を再び満水に。今晩と明朝の今日の自炊分を合わせて4リットルもあれば充分だろう。ここからは道もきわめて歩きやすくなる。
11:00、小蓮華山。猿倉へ落ちる白馬沢、金山沢は途中から見えなくなっておりいかにも急斜面。
11:30、三国境。このあたりから寒くなり始める。防寒用の手袋と帽子を身につけて白馬岳まで往復。天候が悪くなりそうなのでザックは担いだまま登る。
12:00、白馬岳。標高2932m。大勢の人がくつろいでいる。同じ日に日本海から自転車を使って白馬岳を日帰り往復されるYASUHIRO先生に会えるかと期待していたが遅すぎたようだ。ここから標高0mに向けての山旅がいよいよスタートである。
12:25、三国境。ここから人の気配が薄くなる。午後に入って怪しくなり始めていた空がいよいよ崩れみぞれが全身に降りかかる。足元と手先が次第に濡れてくる。降り始めてから1時間も経っていないのに余裕が急になくなっていくのがわかる。縦走路に飛び出した雷鳥の群れを見かけてもカメラを取り出す気にもならない。ガスで周りも見えない。風は強くなる一方。避難小屋はまだだろうか。
13:34、雪倉岳避難小屋。全身ずぶ濡れですっかり冷え切ってしまった。冬山用に使っていたゴアテックスのヤッケとグローブ、帽子。少々大げさかと思っていたがなければ肉体的にも精神的にも追いつめられていたところだった。小屋の中はきれいに手入れされていて快適。20名くらいは寝られるだろうか。
さて明日はどうしようか。もしものことを考えると元きた道を引き返すか、天候が回復しなければ小屋で停滞する展開もありうる。おまけに携帯の電波も通じない。節約の意識が先立ってしまい燃料を焚いて暖まろうとする気すら起きない。ツエルトとエアマットを床に敷いて早々に寝袋にくるまる。
15:30頃、1名の単独行の方が来られる。僕より一回りは年上のようで、お話を聞いていると翌日の行先も目的地も同じ。しかもお住まいも自分の家から近い。これは奇遇である。
16時すぎに夕食とし、17時過ぎには眠りにつく。外は激しい吹雪。明日は動けるだろうか。
夜は寒くてほとんど眠れなかった。

9月24日(土)


雪倉岳避難小屋。寒さでカメラのシャッターがなかなか下りなかった。

雪倉岳から見る日の出。前日とは打って変わって無風の快晴だった。

これから目指す朝日岳

朝日岳から雪倉岳、白馬岳を振り返る。

毛勝三山。

剱岳

朝日岳の下りで。昔火山だったことを思わせる。

日本海につながる栂海新道。地元の山岳会の有志が開いた歴史ある道である。

雲上の楽園から、日本海と沿岸の街を望む。

白い一本の筋は、近く開業が見込まれる北陸新幹線

まるで夏みたい。

栂海山荘。

山の稜線を雲が滝のように流れていった。

日本海に日が沈む。


4時起床。満天の星空が見える。風は弱い。これなら行ける。
5:05、避難小屋を出発。扉が凍っていて開かず焦りそうになったがなんとか開いた。周りはうっすらと雪化粧。来週なら本格的な冬山装備がないと心細いかもしれない。
5:30、雪倉岳。雲海から立ち上るご来光を撮って朝日岳方面を目指す。昨日登った白馬岳もすぐそばにある。彼方には剱岳が。展望があれば多少の登り返しがあっても苦にはならない。途中湿原を横切る木道は滑りやすかった。朝日岳水平道の分岐から人に出会い始める。栂海山荘を目指すパーティが多いようでこの日は40名近くが山荘に泊まるようだ。
7:54、朝日岳。僕たちのほかに誰もいない静かな山頂。日本海、能登半島、麓の平野まで一望できる、これ以上望みようもない好天だ。蓮華温泉に続く五輪尾根の分岐からいよいよ栂海新道へ。黒岩平までは緩やかに標高を下げながら湿原が続く区間。水も豊富に流れていて高山植物に囲まれた、またとない贅沢な道だ。
10:33、黒岩山。朝日岳から標高差800m近く下ってきた。ここから樹林帯に入る。コースタイムで3時間先にある栂海山荘までは標高差は殆どないはずがアップダウンに苦しめられる。北又の水場から犬ヶ岳への登りは堪えた。
12:50、犬ヶ岳。
13:10、栂海山荘。地元の山岳会が整備された快適そうな小屋。僕たちは17名パーティの先行メンバーの次に到着。小屋の1階に場所を確保、毛布もありがたく使わせていただく。
この日は40名近くが泊まったようだが小屋には充分に収容力があった。隣り合わせた人にお話を聞いていると、やはり山を長く続けてこられた人が栂海新道を訪れているようだ。
早めの夕食を済ませたあと、宿泊者総出で日本海に陽が沈む様子を撮影する。ここまで歩いてやってきた思いがどこかで共有されているのか、なぜか一体感のある不思議な夜だった。
18:30には眠りにつく。この日の小屋の中は暖かく、寝袋を脱いでも熟睡することができた。

9月25日(日)


日の出。

白鳥山荘。

白い筋は北陸新幹線

ブナ林が広がる。

登山口にたどり着いた。

海抜2932mから日本海に下りてきた。

親不知から白馬まで、車を回収しなければいけない。


4時起床、5時出発。今日も快晴、日本海まで見通せる。
小屋から少し歩いたところにある1384ピークで焼山のそばから立ち上るご来光を迎える。
最終日は一見標高差が少ないように見えるが精神的にきつくなることを予想していた。白鳥山の手前にある「下駒ヶ岳」の登りが急。標高差が約200mある白鳥山への登りは覚悟していたのでそれほどでもなかったようだ。
7:30、白鳥山。山頂には白鳥山荘。きれいに手入れが行き届いていた。小屋のてっぺんに上ると携帯の電波が入るらしい。栂海山荘を5時前に出たという単独行の方と抜きつ抜かれつを繰り返す。
8:20、シキ割の水場。下ろしていたザックが傾いてデジタル一眼を水に浸しそうになってしまう。ご一緒していたYさんのおかげで間一髪だったが最後が近づいていかにも注意力が散漫になっている。こういうときは行動食を詰め込んでカロリーを充填するに限る。
標高を下げるほどに次第に暑くなってくる。蝉の鳴き声まで聞こえてきた。冬から夏に季節が飛んだ感覚だ。
親不知に向けて最後は林道を2回ほど横切る。最後のピークを過ぎると車の通過音が。意外と大きい音だ。
11:07、国道脇の栂海新道登山口。ホテルのそばにある無料駐車場の隅にザックを置いて急な階段を下って日本海に手を浸したのは11:27。2932mから0mへ。3日かけてようやくたどり着いた。
しばらく余韻に浸ったあと、親不知観光ホテルの風呂に入って親不知駅まで送っていただく。送迎と入浴込で1500円。
親不知から南小谷までJR、栂池高原まではバスを使って車を回収に向かう。雪倉岳避難小屋からご一緒だったYさんにお礼をして別れる。糸魚川では1時間半待ち。北陸新幹線の工事が急ピッチで進んでいる模様。大糸線ディーゼルカーは登山客で混雑していた。平岩から乗ってきた人たちは蓮華温泉からの下山だろうか。
南小谷からはバスに揺られて16:40、栂池高原に到着してようやくクルマを回収。駐車場は閑散としていた。
帰りは糸魚川まで出て北陸沿いを走ることにする。糸魚川で地元の寿司店「すし活」でご褒美。値段は少々張ったがたまにはいいだろう。満足して金沢から敦賀まで北陸道。自宅には26日5時過ぎに到着。

あとで気づいたことなど

今回、登山口と下山口が異なることを承知で現地へのアクセスにはクルマを使ってみました。
参考までに、アプローチや、下山してからクルマの回収までに要した費用などを書き留めておきます。
時間を節約するなら、親不知観光ホテルの脇の無料駐車場にクルマを停めてタクシーで糸魚川駅に移動、大糸線の一番列車に乗れば8時過ぎには栂池のロープウェイに乗ることができますし、下山後クルマを回収する手間が省けるのではないかと思います。

明細 料金 備考
栂池駐車場の駐車料金

900

300円×3日分
ロープウェイの運賃

1,720

栂池高原〜自然園(片道)
ロープウェイの手回り品料金

300

栂池高原〜自然園(片道)
親不知観光ホテルの入浴料

1,500

親不知駅への送迎を含む
鉄道運賃

950

親不知駅から南小谷駅まで
バス運賃

500

南小谷駅から栂池高原まで