最後の夜行急行電車「きたぐに」に乗る

ようやく、乗ってきました。

日本海沿いを、夜通し走る急行電車。
お出かけついでに乗ってきた、急行「きたぐに」の様子を書いておきたいと思います。

大阪駅11番ホーム。
夜行列車に乗るなら、始発から乗って出発の雰囲気を味わっておきたいところです。

昭和42年(1967年)の登場から40年以上。
夜行列車全盛の国鉄時代の空気をそのまま運ぶ電車が、毎日1往復大阪と新潟の間を走っています。
国鉄583系電車」。急行「きたぐに」で最後の活躍を味わうことができます。
その「きたぐに」を大阪駅で待ち構えました。

誇らしげな「新潟」の方向幕。
LEDの方向幕が全盛の今、巻き上げ式の方向幕を見かけることが次第に少なくなってきました。

寝台電車のドアは、段差のある折戸式。
冬はすき間から雪が入り込んで大変だそうです。

ひとつの列車でありながら、「きたぐに」には、自由席、グリーン車、A寝台、B寝台が連結されています。
全盛期には寝台電車と昼行特急でフル活躍した583系の面目躍如、といったところでしょうか。
これは、自由席。寝台車と共通のゆったりした座席は583系の系統でしか味わえないものです。

洗面所。
国鉄時代からは、さすがにリニューアルされていました。

B寝台。
車両によって、赤色のカーテンと青色のカーテンに分かれています。

グリーン車。リニューアルしたシートに交換されていました。
広い天井は寝台車に寸法を合わせた583系ならでは。

乗客もまばらなグリーン車
出発前から、車内改札が始まっていました。

写真撮影に勤しむ家族を見かけました。
登場から43年を過ぎても、風格は健在のようです。

583系が登場したのが1967年。
きたぐに」に使われるようになったのが1985年。
国鉄が民営化されたのが1987年。
JR24年目の今が2010年。
国鉄時代よりも長い年月を、JRになってから走り続けてきました。

B寝台。カーテンは青。
今晩はこの車両の下段を予約しました。

寝台の番号は、カーテンに立派な刺繍が縫いつけられています。
自分の寝台の番号を間違うこともありません。

きたぐに」のB寝台は3段式。これは下段。
出発する時刻が23時過ぎのため、既にシーツも寝台もセットされていました。
幅も広く快適なため、下段の寝台料金は中段や上段に比べると少し割高の価格が設定されています。*1

中段と上段へは、垂直のはしごを登って体を滑り込ませることになります。

中段。
寝台の幅は70cm。荷物を持ち込むと少し窮屈そうです。
寝台の上に露骨に見える荷棚が、なんとも無骨さを醸し出しています。

上段。
体をねじ込ませるような感覚でなければ、たどり着くことができません。
天井のRが迫っていて、長時間乗ると圧迫感を感じてしまいそうです。

上段から車内を見下ろしたところ。

中段と上段のカーテンには、通気口が設けられていました。
カーテンを締め切ったままだと、換気が行き届かないためでしょう。

マジックテープを開くと、換気することができました。

年代を感じさせるクーラー。
個別に調整しないとだめだそうです。

昔は、急行列車や特急列車で見かけることの多かった「便所使用知らせ灯」。
JRになった今だと、どのような呼び方をするのでしょうか。

座席や洗面所がリニューアルを受けても、「JNR(国鉄)」のマークはひっそりと息づいているようです。

肘掛に内蔵されている灰皿とテーブル。

出発の直前、胸が高鳴るひととき。

40年以上走り続けていても、手入れが行き届いているのか寝台にもくたびれた様子は感じません。
それでは、おやすみなさい。

A寝台車の片隅には、昔喫煙スペースとして設けられていた座席がありました。

直江津駅の急行「きたぐに」。
横にいるのは115系でしょうか。いずれも、国鉄時代から走り続けている車両です。

JRには、急行列車はもう数えるほどしか残っていません。*2
この「きたぐに」は、最後の夜行急行電車なのでした。

直江津でしばらく停車したあと、新潟に向けて走り始める「きたぐに」。
2014年に北陸新幹線が金沢まで開業すると、金沢から直江津までは並行在来線としてJRからは経営が分離される予定です。
そのとき、「きたぐに」はどうなっているのでしょうか。

後ろ髪をひかれるように長岡で「きたぐに」を下りて、上越新幹線「Maxとき」で東京に向かいました。
最後の夜行急行電車「きたぐに」。もう一度くらい乗れるかな。

きたぐに」に乗る前に読んでおきたい雑誌2冊

鉄道ジャーナル 2010年 05月号 [雑誌]

鉄道ジャーナル 2010年 05月号 [雑誌]

  • 特集は「夜行列車」。
  • きたぐに」の上り・下りに乗車したルポと、京都総合運転所での整備の様子を記録。
  • きたぐに」に使われている「583系」の歴史についてもまとめた記事がある。

鉄道ジャーナル 2009年 03月号 [雑誌]

鉄道ジャーナル 2009年 03月号 [雑誌]

*1:上段・中段=5,150円、下段=6,300円。

*2:現存する毎日運行の急行列車は「はまなす」「きたぐに」のみ。