書きたい人は増えているのだろうか - ウェブに参加するまでの敷居があるとするならば

社会人になって間もない方とネットの話をする機会がありました。
少し興味深いやりとりをしたことを書き留めておこうと思います。

「ウェブで文章書くって、キモくないですか?」

知人
「hatayasanは、ネットやってて普段どんなサイトを見ているのですか?」
hatayasan
「んー、気になる日記をぼんやり読むくらいだけどね。
ところで、ブログかなんか書いたりしてるの?」
知人
「ブログはしていませんね。さすがにmixiくらいはやってますけど」
hatayasan
mixi”くらい”かー。ウェブからネットに入った僕に言わせると、mixiのほうがよほどウェブより「かしこまったもの」に思えてしまうんだけど。 
で、ウェブってやっぱりmixiとは違うところなのかな。」
知人
mixiに比べたら、ブログって怖いですよ。誰でも見られるところで自分の思っていることなんか書いたら、知らない人から何言われるかわかりませんしね。
ググってヒットしたページで自分を判断されちゃうって、なんかキモくないですか」

mixiはウェブに比べると確かに閉じてはいるけど、mixiの中にはいろいろな人もいる*1し、必ずしも安全とはいえないと思うよ。」
「ウェブにアップした文章が誰にでも見られる場所にあることと、たくさんの人が見に来てくれるかどうかは、また別の話じゃないかなあ。」
ちょっと屁理屈をこねてみようかと脳内がざわめいたのですが、彼の話に静かに耳を傾けることにしました。

「書きたい人」は増えているのだろうか

あれ、いまのウェブは「参加すること」が華じゃなかったっけ?*2
彼と雑談を終えたあと、足元を少しだけ振り返ってみることにしました。

  • ウェブの黎明期に誤用ながらも定着してしまった「ホームページ」という言葉*3
    • だが今や、誰が見たかを知ることができて、アクセスの制御も容易なツールやコミュニティが普及したことで、自分のネット上の「家」として全能感を発揮できる「ホームページ」を持つことは難しくなくなった。
    • いまどきの「ホームページ」に慣れ親しんだ人のなかには、自分の「家」にいやしくも立ち入ろうとする人を選んだり、「家」に2階や勝手口から上がられる*4ことを苦々しく感じる向きもあるだろう。
  • 「利用するウェブ」から「参加するウェブ」に移行するまでに、ウェブ経由で行われるコミュニケーションの総量にどの程度の変化があったのだろうか。
    • 急激に増えていることは間違いないにせよ、SNSのようなツールの普及がこれまで第三者からは見えなかったコミュニケーションを浮かび上がらせ、それが右肩上がりの原資になっている点は、もっと意識してもいいかもしれない。
  • 「書きたい人が増えたわけではない」こういう見方もできはしないだろうか。
    • いまブログ界隈でデビューしている人は、僕も含めて「これまで書きたくても書けなかった人*5」。それに続くのが「なんか面白そうだから自分も書いてみようかな」という人。
    • 一方で、「書こうと思わないけど書くのを急かされているように感じる人」も同じくらいいるだろう。
    • 「別に気合入れてネットしてるわけじゃないし、知り合いが何してるかがわかればそれで十分。誰が見ているかわからないウェブで文章書いても煩わしいだけ」こういう感覚は、見えないだけで案外大多数を占めているのかもしれない。
  • ブログの書き手の数はいい加減もう踊り場を過ぎている*6
    • 「書いてみようかな」と傾いている人をどれだけその気にさせるか。
    • そして「閉じた空間で文章を書いている人」に、ウェブでコミュニケーションする醍醐味をどのように味わってもらうか。
  • この壁を乗り越えるために、大手のサービスはしのぎを削っている。

で、何が言いたいの?

さりげない会話のなかで引っかかったことをつらつら書いていたら、いつのまにかブログサービスの話に脱線してしまいました。
普段は気ままに、そして時にはドキドキしながらウェブに触れることができれば、それが一番楽しいのですけどね。

*1:過去記事。「忘却防止。 - こんな本読んだ - 危ないミクシィ―大流行!SNSの闇

*2:過去記事。「忘却防止。 - ウェブに触れるきっかけは、「利用」というよりもはや「参加」ではないだろうか

*3:「ホームページ」の誤用が招く齟齬については、ここが簡潔で明解。「妄想科學日報 - 無断リンクの勘違い

*4:検索エンジンから直接コンテンツに飛んでくることを喩えて

*5:バリアになっていたのは、おもに技術的なハードルであったり、更新に伴う手間であったり。

*6:資料として。「メディア・パブ: ブログの成長に陰り,踊り場説が浮上」2007年4月。