白山東面台地(山スキー+自転車)

GW前半の4月29日、MTB山スキーを使って白山東面台地(転法輪谷左岸尾根)の様子を見てきました。
2003年にYASUHIRO氏の報告を読んで以来、「いつかは」と秘かに念じ続けてきたルートを、無風の快晴という条件で心ゆくまで楽しませていただきました。
メンバーは単独です。

GPSログ(クリックで拡大)

  • 赤が登り、紫が下りのログ。
  • 歩き始めた地点(大白川ダム)から山頂(御前峰)までのログのみを掲載しています。
  • 登山口の平瀬ゲートから大白川ダムまでは14.3kmをMTBでアプローチ。大白川ダムから御前峰まで復路で7.3km(いずれもGPSで計測)。

記録と所感

2007年4月29日(日)


大白川ダムの林にMTBをデポする。

見事なブナ林。

蛇?(標高1860m)

彼方に乗鞍岳が見えるだろうか。

標高1910mで白山と対面。身を正す。

右側の剣が峰の稜線をコルまで登り、左の御前峰を目指した。

登山口から7時間40分で山頂へ。長かった。

室堂。市ノ瀬まで4月27日に開通したとのこと。数名の登山者に出会った。

別山。

無事に登れたことに感謝した。

コルから御前峰を見上げる。カリカリの急斜面に緊張した。

いざ東面台地へ。

白山の山腹に、恐れ多くも落書きさせていただいたようだった。

いつまでも眺めていたかった。

滑った跡を何度も振り返った。

下は気持ちいいザラメ。

ただいま。

山東面台地取付き点。この藪の向こうにすばらしい景観が広がっている。

行動時間10時間40分。山の神様に感謝しよう。

  • 4/28 19:00 平瀬林道ゲート前
    • 4/27 金曜日帰宅すると土曜日の白山エリアは雨との予報。
    • せっかくのGW、気持ちのいい山を楽しみたい。土曜日の山は見合わせ北陸経由で1日かけて平瀬入り。温泉や本屋に立ち寄りつつ19時には平瀬の林道ゲート前に到着。出発の準備を整え21時には眠りにつく。
  • 4/29 2:30 起床
    • 3時に起きるつもりだったが2時半に目が覚めてしまった。
    • 二度寝してもいいことがないので早めに準備。二人組が先に出発していった。
  • 3:15 平瀬林道ゲート 出発(650m)
    • ここから大白川ダムまで、14km標高差600mをMTBでアプローチする。スキーブーツを履いてMTBにまたがるのは1年前白峰から白山を目指したとき以来だ。
    • 体力を温存すべく、早めに軽いギアに切り替えて脚に負担をかけないよう心がける。途中5.5km、11.0km地点(メータ読み)で5分ずつ休む。身体が少しずつ暖まってきたようだ。
    • 大白川ダムへの最後のつづら折れで先行パーティを追い抜く。
  • 5:00 大白川ダム
    • ギアを使い切る前になんとか最後まで漕ぎ通すことができた。
    • 平瀬道の登山口にはMTBが数台デポしてあった。縦走の帰りの足に用意してあるのだろうか。
    • さて自分はどこに停めておこうか。しばし場所を探し、白水湖へやや下った林のしっかりした枝にMTBをくくりつけておく。
  • 5:15 東面台地取り付き(1260m)
    • 大白川ダムから少し戻って、大白水谷と小白水谷の間の登りやすそうな斜面から取り付く。雪はすっかり溶けておりしばらく藪こぎ。濃い藪に担いだスキーが引っかかり思わず苦笑。斜面を詰めて台地に乗り上げればスキーを履いて歩けるようになった。
  • 7:40 1911m小ピーク
    • 先人の記録で何度も刻み込んできた景観が飛び込んでくる。
    • 眼前にそびえる白山主峰を前に身を正す。これからあの山に登るのだ。
  • 9:20 剣が峰取り付き(2390m)
    • GWだからか、ヘリコプターが山頂付近を周回している。登山者がどの程度取り付いているかを確かめているのだろうか。
    • 2180mピークから主峰取り付きまではなだらかな平原。主峰を目の前にするとこんな急な斜面を登れるか不安と期待がない交ぜになった心境となる。
    • 主峰へは、御前峰と剣が峰の間のカール状の地形は避けて、右側の剣が峰の尾根を登ることにする。2390mでシールが滑り始めたので早めにアイゼンに切り替える。
    • すぐ近くに見える岩がなかなか近づいてくれない。歩いては休む動作をどれくらい繰り返しただろうか。下を振り返って確実に高度を上げていることを励みに黙々と登る。
  • 10:30 御前峰・剣が峰コル(2600m)
    • 大汝峰が間近に見えるコルに到達。コルでも無風の快晴。これ以上のよい条件はないようだ。
    • 最後はテカテカに光った斜面を四つん這いで詰め上げて御前峰へ。
  • 10:55-11:10 御前峰(2702m)
    • 平瀬のゲートから7時間40分、台地の取り付きから5時間40分。最後はすっかり息が切れてしまったが、なんとか山頂に導いていただいた。
    • 山頂の祠に祈りを捧げる。「おかげさまで、無事に頂上まで登ることができました。どうか最後まで見守っていてください。」
    • 室堂から登ってきた登山者に出会う。前泊ですか?と尋ねると市ノ瀬まで県道が4月27日に開通したとのこと。お話を聞いていると6時に出発されたとのこと。速いですねと驚いていると、日本百名山を軒並み日帰りで踏破されている「錆鉄人」さんであることがわかった。
  • 11:20 2690mから滑降開始
    • 御前峰の直下は石も出ているし下も見えない。こんなカリカリの急斜面僕には無理だ。ツボ足で少しばかり下り始めるがこのまま下るのがなんだか勿体ない気がしてきた。
    • 転けてもコルで止まるしやってみようか。シールを剥がしてだめもとで恐る恐る斜面に入ってみる。
    • もっとも、僕のスキル程度でアイスバーンの急斜面でターンを切れるはずもなく斜滑降とキックターンの繰り返し。コルへは少しだけ登り返した。
  • 11:30 御前峰・剣が峰コル(2600m)
    • ここから一気に雪が緩み出す。はやる心を穏やかにして斜面に飛び込む。
    • これまで登ってきた東面台地を望みながら、緩やかな大斜面に自在にターンを刻む。これまで遠巻きに眺めながら「いつかは」と念じ続けていた白山の斜面を、いま滑っている。
    • 滑った後から湿雪スラフが上から落ちてきて嫌らしい。念のためにターンの幅は広めにとる。
    • 主峰の取り付きあたりで、追い抜いたパーティとすれ違う。4月29日は僕も含めて4パーティが東面台地に入っていることを確かめた。
    • 2100mまで一気に下って初めて後を振り返る。コルから平原まで、自分が刻んだシュプールがきれいに残っているではないか。ぎこちないターンの跡がなんとも面映ゆい。
    • それでもいつまでも自分の足跡を眺めていたかった。場を離れがたい気持ちを抑えながら、後ろを何度も振り返り写真を何枚撮っただろうか。あとは地形にまかせて誰もいない大斜面をうっとりしながら下るのみ。
  • 12:15-12:25 1400m地点
    • 静かなブナ林の中でザックに腰かけて昼食。新緑が芽吹く日ももう近いだろう。
  • 13:00 東面台地取り付き(1260m)
    • 方向がともすれば間違っていたとしても、山スキーヤーは雪のつながっている方向に導かれる習性があるのだろうか。易きに下っていたらいつの間にか北側の小白水谷の河原近くまでおびき寄せられていた。少し登り返して軌道修正して行きに通ったルートに復帰。標高1350mから下は藪こぎ。
    • 雪が途切れてスキーを担いでから少しだけ修行の時間。ストックやスキーにまとわりつく藪の煩わしさに最後は悪態をつきながら崖をクライムダウン。
  • 13:15 大白川ダムMTBデポ地点(1260m)
    • 林道に降り立ったところで山岳警備隊の方に会う。先週月曜日から白山東面台地ルートで行方不明になっている山スキーヤーがいらっしゃることを知らされる。今日山頂付近で飛んでいたヘリコプターはもしかしたら捜索にあたっていたものだったのだろうか。そのときはそこまで考えも及ばず、自分のたどってきたルートの様子を伝えることしかできなかった。*1
  • 13:55 平瀬林道ゲート(650m)
    • あとはMTBにまたがるだけでよかった。途中沢の水で喉を潤し2箇所あるトンネルではヘッドライトを出したが、それでも40分で林道ゲートへ。スタートから10時間40分、なんとか無事に帰ってきた。
    • 100kmほど南下した美並の「子宝の湯」で汗を流して20時過ぎには帰宅。夢のような一日が終わった。

*1:後日、遭難された方が4月29日に遺体で発見されたことを知りました。ご冥福をお祈りいたします。