こんな本読んだ〜『情報のさばき方 - 新聞記者の実戦ヒント』
- 作者: 外岡秀俊
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/10
- メディア: 新書
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おそらくは新人の記者を対象にした講義録を編集したものなのでしょうが、ネット上で情報収集を効率よく行いたい、という切り口からも興味深く読むことができました。
情報の「ありか」を押さえる
生半可な自分の知識や蓄積情報で判断するよりも、その分野に強い記者に質問し、その記者がさらに「その道のプロ」から精確な情報を聞き出す方が、ずっと確かです。
22頁
たとえば本ならば全てのページが重要なのではなくて、「必要だと思った箇所、直感やひらめき」さえ記憶しておけばよい。
この「勘所」を、筆者は「インデックス情報」と呼んでいます。
ネットなら、「良いと思った記事をブックマークして、必要と思った箇所やひらめきをコメントしておけば、後々記事を楽に書けるようになる」といったところでしょうか。
日本なら日本の報道環境のもとで、一定のニュースの報じ方や扱いが、世界共通のものだという錯覚に陥らないことです。そのためには、他国の報道機関を絶えずチェックし、ニュースのポロポーションを相対化し、適正な大きさに補正する必要があるでしょう。
88頁
情報の選別力・分析力を磨くにあたって。
自分が接している情報の位置を確認しつつ、複数のニュースをチェックする習慣をつけておけば思わぬ死角に気づくことがあるのではないかと記されています。
新聞や雑誌に書かれていることが信用に足りることなのか、最近ならばネットを少し手繰れば記事の書かれた背景やネットでの評価がわかることが増えました。
ネットの匿名性に言及した大がかりな特集記事がネットでは酷評されている*1というのは、その一例でしょう。
真偽はともあれ、語られていることを立体視するにはマスメディアの「世論」だけではもはや不十分であることを意識しておきたいと思いました。
新聞記者が見たweb2.0
専門家の「玉」と、素人の「石」を比べるのでは公平とはいえません。素人の中にも「玉」はたくさんありますし、全体の「集合知」の総量を比べれば、ウェッブ上の方がはるかに豊かで可能性がある、といわねばなりません。
238頁
新聞社の中の人から見たweb2.0のムーブメント。
情報を生み出す、提供する役割においてメディアはその比重を下げていく一方で、膨大な情報から必要な情報を選別する目利きとしての役回りがこれからのメディアには求められていくと記されています。
先日読んだ『ウェブ人間論 (新潮新書)』で梅田望夫氏は、「玉」を浮かび上がらせるシステムが今後5年くらいの間に見えてくるのではないかと記されていましたが、メディアとウェブ、それぞれ違う立場で異なる未来像が描かれているのを興味深く比較することができそうです。*2
*1:「難病児募金あざける「祭り」−ネット君臨 第1部・失われていくもの/1(その1):MSN毎日インタラクティブ」の一連の記事に対して「毎日新聞が2ちゃんねる「死ぬ死ぬ詐欺」などの「祭り」を大々的に批判 -〔Di〕」 や 「不倒城: 毎日新聞の新特集関連で香ばしい事態が発生している件について。」 といった、真っ向から記事を批判するエントリが立っている事例など
*2:『ウェブ人間論』を読んだ所感は「忘却防止。 - こんな本読んだ〜『ウェブ人間論』 」に書きました。