東北 飯豊 頼母木川下ノ小俣沢(2日目 入渓〜下ノ小俣沢出合)

ゴルジュ帯、雪渓の高巻き

4時起床、6時出発。一晩中蚊の襲来を受けて、顔がすっかりはれぼったい。天気は曇り模様。6時に出発、堰堤を越えるが昨日に引き続いて雨が降り出す。ゴルジュ帯に入る前で堰堤まで引き返し、雨が小止みになった頃を見計らって再び前進を開始する。水は冷たいが重いというほどでもない。
しばらく足慣らしのような河原歩きと徒渉を続け、ゴルジュ入口にさしかかる。水は濁っており、流れは強そうだ。
リーダーのAさんが右岸から取り付きを試みるも、濁り気味の水流にはね返される。次に左岸の滝をへつってゴルジュ帯の様子をうかがうも、水流が強く危険とのこと。ならば、と水線沿いは諦め左岸の滝を巻いて下降点を探る。滝のルート工作はリーダー。後続はユマーリング。滝を上まで詰め、ゴルジュ帯を巻くまで意外に道はしっかりしていた。

 現れた雪渓
 逆くの字滝。左壁を直登した。上部の草付きは悪かった
沢に戻ってからはしばらく平凡な河原歩き。分岐となる小俣沢の出合は注意していなければ通り過ぎてしまいそうなほど入口が狭い。数カ所続く小さな滝は適度な緊張感で快適に乗り越える。最初の難所、逆くの字滝は一旦右岸からのトラバースを試みるが草付きのトラバースが悪く、Y君の提案で滝の左壁を乗り上げる。Aさんリード。滝をジグザグ状に登って安全に高度を稼ぐと思っていたが、途中で荷物とデポしながらもなんと草付を直登していく。後続はユマーリング。テンションをかけてもいいとはいえ草付きの泥壁を登るのはあまり心臓には良くない。思い切り引っ張ったら抜けてしまいそうな草の根を頼りに神経を集中させる。
逆くの字滝を終えると、早くも雪渓が出てくる。短いスノーブリッジは一人ずつ足早にくぐり抜ける。天井からしたたり落ちる水滴と雪渓の中でこだまする流れの音はなんとも神秘的。崩壊したら最後生命の保証はないのはわかっているのだが、不思議と心地よさを感じる空間であった。距離の長い雪渓はさすがにくぐり抜けるわけにもいかず右岸の側壁を巻くことに。ここで初めて先日購入したアイスハンマーが役に立つ。草付きもおぼつかない泥壁ではハンマーを差し込んで支点を確保し体重を移動していく。足場はもとより心許ない。だましだましでトラバース。その繰り返し。しばらくすると植生が変わり木の根を掴めるほどになってきた。雪渓の途切れた小さな枝沢を20m懸垂下降して沢に復帰する。
 崩壊した雪渓を通過する
しばらく歩くと大滝が右岸に出てきた。時刻は16時半。猫の額ほどの河原にツエルトを張る。
(この時点では上ノ小俣沢出合の25m大滝と疑わなかったが、溯行を終えた場所と照合すると、下ノ小俣沢の出合の20m大滝を前に幕を張っていることがわかった)
目の前には巨大な雪渓が沢を覆っている。雪渓から湧き出す冷気を浴びていると真夏でも寒い。おかげで虫はほとんどおらず、昨夜に比べると格段に快適な一夜となった。20時半には就寝。