差別なのか区別なのか〜会社説明会で質問した学生の言葉が忘れられない

大学のランクと就職活動で得られる情報の格差には深い相関関係があるという話が最近賑やかなようだ。

「就職サイト」は、実は学生にとっての就職に関する情報やチャンスの大学間格差を製造する装置として働いていることに注意しなければならない。
もじれの日々 - 就職情報の大学間格差生成装置としての就職サイト

大学のランクが就職できる企業のランクに高い確率でつながっていることは、ウェブが普及する前は口コミのレベルで学生の間でそれとなく共有されていた意識だったように思う。
資料請求はまだすべてハガキだった10年近く前、就職活動の足慣らしのつもりでのこのこ出かけた会社の説明会で、目が醒めるような質問をする学生がいたことを今でも覚えている。

「自分と違う大学の友人には詳しい資料が送られてきて早い時期から面接してもらっているのに、自分の場合は彼より会ってもらえるの遅いし情報もほとんどもらえない。これはどういうことでしょうか」

同じ四大卒の大学生ならばスタートラインは同じだと彼は信じて疑わなかったのだろう。学生を差別する企業に責任はないのかといわんばかりの剣幕だった。
「え、それは…」
一瞬しどろもどろになった企業の採用担当者。担当者が本音で何を考えていたのか周りの学生はうっすら気づいていたと思う。が、言葉に出すのが躊躇われただけで重苦しい空気がそのあと晴れることはなかった。

情報格差の原因は『高偏差値大学の学生を採用したい』という企業の意図であり、就職サイト経由だろうがそれ以外だろうがアプローチの手段は関係ない」
diary.yuco.net - 「就職サイト」が大学生を選別している?んなバカな。

どの企業も優秀な人材を効率よく採用したいのは同じこと。旧大蔵省の「ノーパンしゃぶしゃぶ」(1997〜1998年くらい。懐かしい)の前後に学歴社会の弊害を糾すような議論が起きて、一時学歴一切不問でエントリーシートを書かせて選考するのが流行ったようだけど、結果的に勝ち残ったのが所謂偏差値の高い大学の学生ばかりだったとするならば、企業も学習してより効率的に学生を選別する方法を考えるはず。

一度企業に入ってしまえば普段の活動で実力は明らかなのだから、学歴にはほとんど意味がない。
学歴差別について - chem-duckの日記

「偏差値の高い大学を出た学生は戦力になる」という解答が企業の一連の試行錯誤から導かれた結果ならば、それはそれで重みがあると認めなければならないだろう。
そのとき、企業の担当者は「差別」という生々しいニュアンスではなく、むしろ「区別」といったスマートな意識のもとスクリーニングしている可能性が高いと思う。