海抜0mから富士山へ(田子の浦港〜富士宮口〜剣ヶ峰)


いちおう、登ってきました。
7月15日(日)は、海抜0mから富士山の様子を見てきました。

出発まで

お気に入りの山のスケールを全身で受け止める方法のひとつとして、海抜0mから人力で山頂を目指す手段がある。
そろそろ海から富士山を目指してみたい。
天気が気になるところだが、連休中日の7月15日、温めていた計画を実行することとした。

写真


出発から4時間半、五合目のバリケードに自転車をくくりつけて登山開始。

五合目はまるで町のような賑わいを見せていた。

山頂の石碑。強風と霧雨で修行のようだった。

岩陰に隠れて強風をしのぐことができた。

出発から12時間半、田子の浦港に戻ってきた。

記録

2012年7月14日(土)

20時に自宅を出発、4月に開通したばかりの新東名高速道路を走る。夜なので景色はわからないが、走りやすさは新名神高速道路並みでトンネルが多いとの印象。
清水から東名高速への連絡道を通って、富士川サービスエリアで仮眠する。

2012年7月15日(日)出発まで

3時半に目を覚ます。小雨でいきなりやる気をくじかれる。
富士山頂はあきらめて山麓を一周しようか。弱気になったところで考えるのが面倒になりもう一度眠りに落ちる。
1時間たつと雨もやんだようである。気持ちを新たにサービスエリアに併設されたスマートICで高速道路を出て、海沿いの出発点を見定める。
田子の浦港近くで車を置ける場所を探すがなかなか見つからない。しばらく周辺を徘徊して東海道本線吉原駅近くに駐車。そばの漁港に立ち寄ることをもって海抜0mから出発することとする。
5時30分、田子の浦港を出発。富士山登山口である五合目までは48km、標高差2370mのヒルクライムである。

出発〜富士宮口五合目

10km強走って富士宮市。標高は130m強。あと30kmで2000m標高を稼がねばならないのかと思うと苦笑いするほかない。雨こそ降っていないが霧で見通しは良くない。セブンイレブンに立ち寄り軽く水分補給。無理せずに行くほかないだろう。
富士宮の市街地から外れて富士山麓に取り付くと8〜10%の勾配が出迎える。ギアは34-24。最も軽いギアの一枚手前でなんとか踏ん張る。夏休み期間中、富士山五合目はおおむねマイカー規制がかかっている模様。自転車も通行止めだったら断念するいい理由ができるな…またここでも弱気になっている。
標高1200mの西臼塚パーキングで三度目の休憩。林道を走ると思われるオフロードバイクを車に積んだ人たちが集まっている。
標高1460mで五合目への分岐。旧料金所跡で長袖を着る。近くにいた警備員のおじさんに励まされる。聞くと、この愚図ついた天気の中でもかなりの登山者が山頂を目指しているとのこと。これは念のため行くほかないだろう。
分岐から五合目までは12km。残り5.2kmの標識のあるパーキングでも一服。薄くガスがかかったままで展望は全くない。速度は終始6〜8km/h。我慢しながらの登りを続けて、出発から4時間30分をかけた10時に五合目に到着する。
結局、自転車区間で休憩したのは、富士宮市セブンイレブン、山麓手前の自動販売機、西臼塚パーキングエリア、五合目分岐の旧料金所、登山口まで5km手前にある休憩所の5カ所だった。
五合目は降りてきた人、これから登る人で町のような賑わいを見せている。
自転車は駐車場の外れの目立たないところにあるバリケードキーロックでくくりつけておく。強風と雨で飛ばされないか心配なので、自転車用のSPDシューズはザックに忍ばせ、ヘルメットは装着したままで登ることにする。
登山靴はハイカットの縦走用の靴を持ち込んだ。安心を得られると思えば軽いものである。

富士宮口五合目〜剣ヶ峰

10:20、サイクリング用の雨具を羽織って大勢の登山者に紛れて富士山頂を目指す。
脚は自転車区間でほぼ使い切っており棒に近い状態。空回りして思うようにペースをつかめない。後ろから何名か抜かれてしまう。心にさざ波が立たないわけではないが、最後まで無事に登って下ることが最優先と割り切ってマイペースで登るに徹する。
六合目を過ぎると霧雨がひどくなり、数歩も歩かないうちに眼鏡が水滴だらけになり視界を遮られる。こういうときに眼鏡をかけた状態だと思わぬハンディを背負うことになる。ただ、今回の富士山に限れば登山道はしっかりしているので、迷う心配がないのが救いではある。
元祖七合目で500mlの水を買う。500円也。背に腹はかえられない。休憩がてら小屋にとどまろうとすると「水を買っただけでは休憩できませんよ」と思い切り釘を刺される。世知辛さを覚えるとともに、自分の中につい甘えが生じていたことを恥ずかしく思う。
九合目から上は雪渓が出てくる。さすがに人が集中する7月の連休の時期だからか、登山道が横切るところはきれいに除雪されていて夏山装備でも十分歩くことができる。
13:30、外輪山に到着。社寺の陰に隠れて強風を逃る。山頂である剣ヶ峰までは外輪山を20分弱。
ここからも風が強くなり、顔を腕で遮りながらの行軍となる。
13:42、ようやく富士山頂。3年前スキーで訪ねたときと同じく、霧で視界はまったくない。*1
山頂付近は旧測候所の建物に遮られてか風はそれほどでもなく、写真を撮る余裕はかろうじてある。
しかし防水の機能がないスマートフォンでは霧雨のなか写真を撮ることにはどうしてもためらいを覚えてしまう。面倒でもデジカメを持ち込むべきだった。

剣ヶ峰〜富士宮口五合目

山頂への滞在は5分程度でもときた道を下り始める。八合目あたりまでは登山道の幅も狭く、登ってくる登山者と道を譲り合いながら下ることになる。登り・下りともに大人数のパーティが多いこと、自然に発生した大人数だと下りのペースが慎重にならざるを得ないことが重なってだろう、強まるばかりの風雨の中待機を余儀なくされる時間が増える。サイクリング用の雨具では不十分だったのだろう、雨水がしみ込み始め体温が次第に奪われていく。下る体力や気力があっても、自分の意思ではどうにもならない。思わぬ修行をさせられているようでここが今回の登山で一番辛いところだった。
七合目から下は道幅も広くなり、自分のペースで歩けるようになる。砂礫を歩いていると靴の中に砂利が入ってくるため六合目で一旦靴を脱いで掻きだしておく。スパッツがあれば快適だったかもしれない。
16:15、五合目。山頂を出てから2時間半近く。強風と霧雨に悩まされたこと、下山の渋滞に巻き込まれて思うように動けなかったことを思えばこんなものだろう。自転車にかけていた鍵を外し、靴を自転車用のSPDシューズに履き替えているとおばちゃんに声をかけられる。聞けば、九州の佐賀県から新幹線を使って来られたそうだが、強風と吹き降りの雨のため大事をとって七合目で引き返されたとのこと。自分を大学生と勘違いされたようで、行動中携帯されていたバナナやおにぎり、パンなどをありがたくいただいてしまう。

富士宮口五合目〜田子の浦港〜帰路

16:30、自転車で下り始める。何もしなくてもメータ読みで50km/hまで加速する。
ほとんどペダルを漕ぐことなく12km走って富士山スカイラインの分岐。ここからストレートの下りになるのだが霧が濃くてブレーキを軽く握って様子を見ながらの下りとなる。富士宮市に入ると蒸し暑くなってくる。富士山麓からようやく下りてきたようだ。
スタート地点の田子の浦港には18:10到着。出発から12時間半、富士山頂からは4時間半をかけていた。
満足という感覚はなく、混雑していて天気の荒れた場所からようやく逃れることができたとの安堵の思いが強い。今度やるとすれば晴れた日を狙って行きたいとも思った。
帰りは東名高速道路が渋滞しているとのこと。節約モードに切り替えて、富士から四日市までの230kmは国道1号、23号をバイパス主体で走り、四日市から高速道路。新名神高速道路で1度だけ仮眠、自宅には翌日3時過ぎに到着した。

おわりに

海抜0mから自転車と徒歩で富士山を日帰りで目指した記録は、ネット上を探すといくつか見つけることができる。

これらの記録を読んで鼓舞され、自分も海抜0mから最高峰に登る経験を積むことができた。
家庭を持つと自由に使える時間は限られてくるが、制約されたなかでも自分自身を満足させることができないか、もう少し試してみたいところである。

GPSログ

*1:2009年に富士山を訪ねた記録は「霧の中の最高峰 - 富士宮口から富士山剣ヶ峰 - 忘却防止。」を参照。