2012BRM526中部600km (岐阜から鳥取砂丘を往復)


やればできる、かもしれない。
5月26日は、自転車のイベント「ブルベ」に参加してきました。

出発まで

4月に400kmを走ってみて、無理をしなければもう少し距離を伸ばせる感触を得ることができた。
600kmを走るのは2010年の紀伊半島以来2年ぶり。子どもが生まれて右肩の脱臼の手術を受けて以降は初めてになる。
前回は後半で仮眠を繰り返して32時間かかった。天気や条件によって左右はされるだろうが、今回は前回より早く走ることを目標にしてはどうだろうか。
作戦としては、PC以外での休憩をできる限り減らす、睡眠は計画的にとる、後半に備えて前半は体力を温存する、あたり。
その前に、ロングライドの勘を取り戻しておくこと、積み残しのない状態で仕事を片付けておくこと、
そして、家族の理解を得ることだ。

記録

2012年5月25日(金)

金曜日ほぼ定時に仕事を終えて自宅でネットをチェック。Twitterのタイムラインを眺めながらはやる気持ちを抑えつつ22時に寝て翌日1:30に起床、家人に「行ってくるよ」と言い残して出発する。
名神高速道路がリフレッシュ工事のため豊中から大津まで通行止め。京滋バイパス経由で一宮市光明寺公園に向かう。

スタート(一宮)〜PC1(浅井:52.3km)

朝4時すぎに公園に到着すると既に参加者が大勢集まっている。中部のブルベは受付を済ませるとブルベカードだけでなく名前入りのテプラを貼ったカードケースをいただけるのがありがたい。
スタッフからの事前のコース説明は「目的地の鳥取まで最短距離でルートを引いてあるので、車が多い国道区間に気をつけて」。検車を終えて朝5時のスタート。ちょうど空が白んだ頃、明るいうちに走れる時間を最大限に確保した、理想的なスタートの時間かもしれない。
今回の出走者は50名程度だろうか。4月のBRM428中部400kmを14時間44分という記録的な時間で完走した三船雅彦氏も参加されている。
しばらく先頭集団の末尾に混じってみるも、平地で40km/hを超える巡航スピード。これから600kmを走りきらねばならないのにこれでは身がもたない。
大垣から関ヶ原に向かう国道21号線の緩い登りで自然に先頭集団からは距離が開いていく。ちょっと次元が違いすぎる。
国道365号線はまっすぐ。緩い登りを過ぎれば下り基調の一直線の道路。気持よく飛ばしてPC1へ。

PC1(浅井:52.3km)〜PC2(高島:94.9km)

ほぼ同時刻にPC1を出発した人と走る。かなり年配に見受けられるが精悍な印象。ミスコースのあったときは適宜声かけをして進む。
木之本の街なかの石畳の道路を過ぎて琵琶湖沿いを走る。琵琶湖岸はトンネルでショートカット。塩津の道の駅では鯖寿司が美味しいのだがPC以外での休憩はできる限り減らしたいため脇見をするのみで通過。
国道303号線の2つの小さな峠を越えればPC2までの登りはほぼ終了。国道161号線に合流して追坂峠からは快適な下り。ただ帰りはこの道を登らねばならないのかと思うと無邪気に喜んでもいられない。
マキノから今津までは国道を離れて琵琶湖岸を走る。2週間前に琵琶湖の北湖を友人と一周したときに通った道だ。
土曜日は晴れて気温も上がりそうだ。PC2で待機されていたスタッフに「ばてて全然あきませんわ」と言い残して出発する。

PC2(高島:94.9km)〜PC3(舞鶴:154.9km)

国道303号線をじりじり登って福井県へ。舞鶴までは国道27号線を若狭湾沿いに進む。
再稼働で話題の大飯原発高村薫の小説『神の火』のモデルとされる高浜原発はすぐ近くにある。311の原発事故のあと必要以上に知識がついたせいか、27号線沿いの道の駅や公園、JRの駅が他に比べると豪奢に感じられる。
青い海沿いを快調に走り、時折出てくるアップダウンはむしろ快適ですらある。夏に走りに来れば絵になりそうなルートだ。
松尾寺付近の登りを越えれば京都府へ。 PC3のコンビニは「ミニストップ」である。

PC3(舞鶴:154.9km)〜PC4(福知山:203.7km)

PC3のある東舞鶴から舞鶴市のもうひとつの市街地である西舞鶴までへは小さな峠を越える。舞鶴には海上自衛隊の基地があり、道沿いに走るだけでも普段は目にできない護衛艦を見ることができる。
1週間前に下見に訪れたときに立ち寄った「道の駅とれとれセンター舞鶴」は通過、小さな峠「念仏峠」を越えて橋を渡って由良川の左岸を走る。
川沿いに走るだけなのだがなぜかトンネルを挟んだ軽い登り下りがあり苦笑いする。
国道9号に出ればあとは国道9号を鳥取まで進むのみ。次第に暑くなってきた。

PC4(福知山:203.7km)〜PC5(養父:245.2km)

PC4から、先行されていた人と一緒に走る機会を得る。走行中のトラブル処理をされていたときに僕が偶然追いついた格好。
だが、予想していたとおり先頭を交代するとあっという間に離されてしまう。重いギアをそつなく回す重厚で安定したペダリング。この人、只者ではない。
この区間のポイントは、京都府兵庫県の県境にある「夜久野峠」と、兵庫県の養父から八鹿へ抜ける軽い登り。このあたりのルートは車やバイクでは何度も走っているのでイメージはたやすい。
八鹿から関宮へは意外にもなだからな登りが続きスピードが頭打ちになる。
さてここから今回のブルベの核心ともいえる山岳路が始まる。ここからPC6まで、そして折り返してPC7までの120kmを乗り切ることが第一の核心である。
ここはマイペースに走るほかない。これまでペースを合わせてくれていたTさんには「先に行っておいてください」と伝える。

PC5(養父:245.2km)〜PC6(鳥取:309.6km)

兵庫県の養父から国道9号を通って鳥取県に入るには、PC5からPC6までの60kmの間に八井谷峠、笠波峠、春来峠、蒲生峠の大小4つの峠を越えなければならない。そのうち大物はループ橋で高度を稼ぐ八井谷峠、ひたすら真っ直ぐな上りが続く春来峠。250km走ってきた身に見通しの良い登坂車線がじわじわと効いてくる。
ただ、覚悟さえ決めておけばいくら時間をかけても構わないと割り切り、焦らず黙々と漕ぐに徹する。
湯村温泉のある新温泉町を通過、豪壮な温泉旅館を通過して鳥取県を目指す。県境の蒲生峠はそれほど大したことはなかった。
鳥取県に入って295km地点で、折り返してきた三船雅彦氏とすれ違う。300km近く走って30km近く差がついているということか。
鳥取砂丘を通過して、17:10にPC6に到着。309kmを休憩込みで12時間10分、表定速度25.4km/hのペースでやってきた。峠越えで苦しめられた割には、予想以上によく走れている。
ここからは夜になり暗くなるだけでなく、眠気にも苦しめられる。まずは安全第一に徹することだ。
スタッフのHさんはこれから翌朝3時までにスタート地点の岐阜県一宮市に戻ってゴールの受付をせねばならないそうである。 大変なのは自分たち参加者だけではないようだ。

PC6(鳥取:309.6km)〜PC7(養父:374.1km)

鳥取砂丘の入口の写真を撮って後半スタート。
前半を終えようとする参加者と次々にすれ違う。頭を下げるだけでは物足りなくなりできるだけ片手を振って挨拶をするよう努める。
蒲生トンネルの手前からナイトランに。覚悟していたとはいえ春来峠あたりから脚が回らなくなってくる。「キツイ、キツイ!」周りに誰も居ないことを確かめて一人暗闇のなか叫ぶ。
八井谷峠のループ橋を豪快に下ってPC7へ。60kmにちょうど3時間をかけていた。
塩分が不足していると感じたので、休憩スペースに陣取ってカップラーメンを食す。休憩されていたTさんとはほぼ入れ替わる格好。温泉に入るために先に出発されるとのことだった。

PC7(養父:374.1km)〜PC8(福知山:415.6km)

ひとまず核心の山越えは過ぎた。あとは迫ってくる眠気とどう付き合うかが鍵になる。
まだ20時台なので次のPCまでは走っておくことにする。この区間は大した登りはないが朝来市(和田山)での緩い登り坂がじわりと効く。
さすがに眠い。PC8では、駐車場でツエルトに包まって1時間ほど仮眠する。

PC8(福知山:415.6km)〜PC9(舞鶴:464.4km)

ツエルトを被って寝ていたとはいえしばらく経つと体が夜露に濡れている。やはりこの時期夜は寒いようだ。
由良川左岸の国道175号線あたりからルートを単調に感じるようになる。トリップメーターを眺めながら次のPCまでの残り距離を数えるのが唯一の関心ごとになっている。
PC間近の西舞鶴付近でTさんに追いつく。道の駅但馬楽座の温泉で汗を流されたそうである。
PC9のミニストップの飲食コーナーで二人机に突っ伏して小一時間仮眠する。今思えば、横になって眠ったほうが体力の回復も早かったかもしれない。

PC9(舞鶴:464.4km)〜PC10(高島:524.3km)

気温は11度、長袖長タイツでも肌寒さを覚えるほど。半袖半タイツのTさんはコンビニで合羽を買って応急の防寒対策をされている。
PC9からPC10までの距離は60km。概ね50kmごとにPCのある今回のブルベでは比較的長い。これまでPCと砂丘での記念写真のほかに自転車を降りたことはなかったが、泥のような眠気を前に途中で一度休んで体制を立て直すことを考える。
Tさんはすぐに見えなくなるが、自分はまるで脚に力が入らない、「ネムイ」「キツイ」の言葉をひたすら繰り返す歌を自作して大声で叫んでも顔をしかめて頭を左右に振るばかり。
センターラインをはみ出して走っている場面にはっと気づいてようやく危険を意識、PC9から30km強走った小浜市ファミリーマート(メーター読みで498km地点)でたまらず仮眠の態勢へ。
ツエルトを広げて店の脇で寝ていると店員に「大丈夫ですか?」と声をかけられてしまう。大の大人がコンビニの駐車場で寝ているのはたしかに奇妙な光景であったことだろう。
目覚めると既に空が白んでいる。5時前だ。国道303号線に入ってからは向かい風の緩い登り。ギアをインナーに落としてもスピードがまるで出ない。ここは耐えどころである。
PC10のローソンでは米の食感が恋しくなり唐揚げ弁当を食す。
携帯をチェックすると、鳥取砂丘などでfoursquareにアップしておいたポストに「いいね!」がついている。見てくれている人がいるのを感じられると、どこからともなく力が湧き出てくるようだ。

PC10(高島:524.3km)〜PC11(浅井:567.0km)

日曜日も雲ひとつない晴天、暑くなりそうだ。琵琶湖を流して追坂峠へアタック。下りで気持ちよく流した箇所、登りはやはり長く感じられる。
国道8号から365号にスイッチ、平坦な道を走ったところにPC11。残り50km強。
ここにきて、ようやく完走できるのではないかと意識を始める。

PC11(浅井:567.0km)〜ゴール(一宮:619.3km)

関ヶ原に出るまで、20kmほど走る国道365号線はまっすぐな道路。向かい風とゆるやかな登りのなかスピードは出ない。関ヶ原に出ると残り30km弱。9時台だ。
もしかしたら、このまま走れば30時間を切れるかもしれない。目標が見えると俄然やる気が出てくる。悩まされていた尻痛がいつの間にか引いている。
それでも心を落ち着かせるように用心深く元きた道を走り、ゴールに到着したのは10時41分。所要時間、29時間41分。前回の600kmより速く走るという目標はいちおう達成できた。
折り返しの鳥取で通過をチェックしてくれたスタッフのHさんにゴールを報告する。長い距離を走るきっかけをいただけたこと、そして暖かく見守ってくれたことに感謝。
帰りは高速道路のサービスエリアで仮眠を繰り返して、夕方前に自宅着。よく遊んだ土日でした。


617km。これまでの自転車生活で最長距離を走りました。