日本海から白山へ(手取川河口-別当出合-御前峰)


そのスケール、この身体で受け止めたい。
5月5日(土)は、日本海から白山の様子を見てきました。

写真


手取川河口の美川大橋をスタート。5時20分。

市ノ瀬には8時30分に到着。ここから別当出合の2km手前までは除雪が終わっていた。

雪が出始める。そろそろ自転車をデポする場所を探さねば。

別当出合。ここから春山装備。

御前峰。眼鏡を飛ばされるのではないかと思うほどの強い風だった。

室堂はGW期間中は営業していた。幽かに視界が開けたところ。

別当出合の一本橋。まだ板はかけられていない。

ただいま。

なんとか明るいうちに戻れた。

記録

出発まで

GW前半のブルベの余韻に浸っていたところ、昨年白山一周のサイクリングでご一緒したmattaさん写真に釘付けになった。海抜0mから白山の登山口の別当出合を自転車で目指した写真である。*1途中で雪に阻まれ別当出合まで自転車で進むことは難しそうだが、山の装備を担いで乗り込めば海抜0mから白山の山頂を目指すことができそうな気がしてきた*2。初夏の熱気から春山の陽気までを一日で楽しめる、贅沢な一日になることは間違いなさそうだ。

2012年5月4日

5月4日の20時すぎに自宅を出発、3時間ほど走った北陸道の安宅PAで仮眠。雨がぱさついている。5日は晴れるというが、天気が芳しくないようなら出発の時間を繰り下げねばならないかもしれない。

手取川河口〜市ノ瀬

2時に起きて夜明け前に出発するつもりが5時近くまで寝てしまっていた。雨は止んでいるようだ。小松ICで下車、手取川の河口から2kmほど北上したところに車の駐車スペースを見つけて出発の準備。山の装備と自転車の装備を一通り確認して5:13に出発、河口の出発点となる美川大橋を出たのは5:20。まずは市ノ瀬を目指す。
この時期の山は晴れれば雪の照り返しで夏山のように汗だくになる一方、白山のように2000mを超える山だとひとたび荒れれば冬山と変わらなくなるため、多少重くなるのは承知で装備をひと通り持ち込む必要がある。普段のサイクリング装備に加えて、ザックには登山靴、12本爪アイゼン、ツエルト、アイスバイル、アウターの下(上は常時着用とした)、アウターのグローブを用意、*3カメラは携帯電話のカメラで代用したが30リットルのザックの収容量ぎりぎりとなる。
いざ自転車にまたがってザックを背負うとじわりと背中に食い込む重さ。普段のサイクリングでは重い荷物を担ぐことがぼほないためだろう。荷重の分散を工夫しなければ体力を徐々に吸い取られていきそうだ。
手取川を東に10kmほど進んで国道157号線に合流。対岸の県道などもルートとしては魅力的だが白峰までは国道を流す。手取川ダムの湖岸のトンネルは暗いうえに車の通行量も多い。昨年と同様、上半身に反射タスキをかけ、自転車にはLEDの尾灯とヘッドライトを2灯装着してある。時間帯がまだ早かったのも幸いしたのかもしれない、それほど不安を感じることもなく通過する。
白峰で国道157号線から離れ市ノ瀬へ。概ね2車線の幅の広い道路をじわりと登っていく。

市ノ瀬別当出合

市ノ瀬には8:30に到着。自動車が入れるのはここまで。白山を目指したと思われる登山者の車で賑わっている。橋のゲートの脇から自転車を進入させて別当出合へ。ここから緩い登りが間断なく続くようになる。顔をしかめながらの登り。身体全身から水蒸気が立ち上る。ヘアピンを二つ越えたストレートの登りでとうとう観念、自転車を降りて押して歩き始める。この先まだまだ長いので無理をしないことが大切だ。押し始めて1kmほど歩いたところから雪が出てくる。登山者の自転車が道端に数台デポされている。雪は繋がっては途切れてを繰り返して、雪が深くなり始めたところで道端に茂みを探して自分も自転車をデポ。出発する前は殊勝にも自転車の装備も担いで登って盗難防止などと考えていたがもはやそんな余裕はない。自転車本体だけでなく、自転車の場面でしか使わないもの(SPDシューズ、チューブ)もデポして身軽になることにする。ヘルメットは日除けも兼ねて被ったままで。この日は別当出合の1.5km手前まで進めたようだ。
しばらく歩いて別当出合。ここでアウターの下を身に着ける。

別当出合〜御前峰

別当出合を出てすぐの一本橋には板がまだかけられておらず、バランスをとっての歩行が必要になる。さすがにGW、対岸には白山から降りてきた登山者が自分たちが渡り終えるのを待っている。
飯場までは岩の出た登山道を忠実に歩く。雪がどっさり残っているのはここから上。雪の照り返しで夏のように暑い。雪がグサグサに腐っていて足場も安定せず歩きながら補給を繰り返して進む。
甚之助ヒュッテには11:30到着。ここから標高2000mを超えるためアイゼンを装着。雪は適度に締まっておりアイゼンの爪がよく効く。太いトレースに導かれるがままに登っているとエコーラインの稜線に出た。まだ見通しはよく弥陀ヶ原、室堂、別山の方面が望める。まるで雪の砂漠を歩くようだ。
弥陀ヶ原から室堂への登りから天気が怪しくなり始める。困ったことに新調したばかりのアイゼンの金具が外れてしまう。13:10、室堂。突然小屋が現れたと思うくらい視界がほとんどなくガスの中。ありがたいことにGW期間中は小屋が営業している模様。入口の前で荷物を下ろしてアイゼンの様子を確かめる。長さを調整する金具に雪がまとわりつくと外れやすくなる作りになっているようだ。*4ここまでアイゼンがないと進めない箇所はなかったが、念のため山頂までは持って歩くことにする。
天気は回復する兆しもないが、先行者のトレースとGPSを頼りにすれば登ることはできるだろう。自分が決めていた山頂のタイムリミットは15時。まだ余裕はある。
室堂から御前峰までは標高差250m。時折ハイマツの上を歩くと雪面がズボッと抜けて足をもろとも雪面に埋めてしまう。ここで後悔したのが、軽量化を理由にスパッツを持ってこなかったこと。靴のベロから入った雪が溶けて中でグチュグチュになってしまいブーツに溜まった液体の水が体温を奪っていくのだ。日帰り登山なら不快で済むがこれは詰めが甘かった。濃い霧の中を歩くと眼鏡が曇って視界が妨げられる。風と向き合うように歩くと眼鏡を飛ばされるのではないかと思えるくらい風が強い。腕を目の前に重ねて防御の姿勢を取りながら進む。登山道が雪に埋もれていたのは標高2550mくらいまで。それより上は登山道が露出している。あまりに風が強いため雪が飛ばされているようだ。
14:02、御前峰(白山山頂)。展望の全くない白山の山頂は初めてかもしれない。風と霧が強いだけで雨や雪が降っていなくてよかったと思うことにしよう。記念写真を撮ってそそくさと下山にとりかかる。

御前峰〜別当出合

室堂までの下りはハイマツ地帯に足を取られないよう細心の注意を払う。室堂まで下ってもガスは晴れる様子もない。GPSのログとトレースを頼りに確実に下ることにする。
エコーラインの取り付きから甚之助ヒュッテまでの下りが急斜面だが随所に赤布が立てられているので安心。甚之助ヒュッテまで下ってしまえば展望は開け始める。見上げると標高2000m以上はガスの中。あとは明るいうちにどこまで行けるかだ。安全地帯に下りられた安心も手伝って小走りに雪面を駆け下りていく。
別当出合の一本橋を渡ってしばらく歩き、自転車を無事回収。靴を履き替え、アウターを脱ぐ。落ち葉がホイールにまとわりついて漕ぎ始めはブレーキが効きにくい。

別当出合〜手取川河口

16:24に市ノ瀬、16:45に白峰の国道分岐。休憩はせずどんどん行く。市ノ瀬から白峰への道は放っておいても40km/hで進めてしまう見通しの良い快適なダウンヒル手取川ダムの本体の取り付きの下りも豪快。下り基調でスピードは乗る。
別当出合から60km、ゴールまであと10kmの地点にある川北町のコンビニで下りで初めての休憩、ゼリーと果汁100%のジュースを補給。
手取川河口の美川大橋には18:38到着。所要時間13時間18分、海抜0mから白山を日帰りで往復に成功。春山装備一式を担いでまあまあのペースで走れただろうか。日は沈んだ直後だったが明るいうちに戻れてよかった。
帰りは高速道路を使っても渋滞していそうなので国道8号と161号を使って0時過ぎには自宅着。
よく遊んだ一日でした。

行程

  • 5:20 美川大橋(0m)
  • 7:45 白峰(国道分岐)(520m)
  • 8:30 市ノ瀬(830m)
  • 9:20-9:27 別当出合1.5km手前で自転車をデポ(1220m)
  • 9:45 別当出合(1270m)
  • 11:30 甚之助ヒュッテ(1970m)
  • 13:10-13:30 室堂(2450m)
  • 14:02-14:07 御前峰(2702m)
  • 14:25 室堂(2450m)
  • 15:05 甚之助ヒュッテ(1970m)
  • 15:50 別当出合(1270m)
  • 16:00-16:10 自転車デポ地点(1220m)
  • 16:24 市ノ瀬(830m)
  • 16:45 白峰(国道分岐)(520m)
  • 18:38 美川大橋(0m)

*1:自転車と登山を組み合わせて日本海から白山を目指した記録は、ネット上では以下の2つを読むことができる。「白山 自転車 日帰り:YASUHIROのマウンテンワールド(2010年6月)」及び「日本海から白山日帰り:晴れたらじっとしていられない(2007年8月)」。今回のルートは後者を参考にさせていただいた。

*2:この数年、4月・GWの時期に白山には山スキー・自転車で訪ねている。2006年は「白山(市ノ瀬〜砂防新道ルート)2日目 - 忘却防止。」、2007年は「白山東面台地(山スキー+自転車) - 忘却防止。」、2008年は「白山 白峰 - 市ノ瀬 - 別当出合 - 砂防新道 - 御前峰(自転車+山スキー) - 忘却防止。」、2009年は「白い山のふところへ - 白山 市ノ瀬から湯ノ谷・丸岡谷 - 忘却防止。」、2011年は「自転車で白山一周 - 忘却防止。」。

*3:スパッツを軽量化を理由に省いてしまったのだが、あとで後悔した。

*4:GRIVEL製。次回以降対策が必要。