北アルプスの入口で - 新穂高温泉から弓折岳

あの山の向こうには、さらに山が見える。

自分にとっては、まだ遠い場所。
4月19日(土)は、新穂高温泉から「弓折岳」に行ってみました。

記録など

2009年4月18日(土)

日曜日はどうしようか。昼過ぎに山を降りて新穂高温泉の入口にある「栃尾温泉 荒神の湯」の露天風呂に浸かりながら考える。
この時期に新穂高温泉から北アルプスに入るルートとして思い浮かべるのが、槍ヶ岳の飛騨沢、小池新道から双六岳方面の二つ。
どちらも長いルートだが、夜中ヘッドランプの灯りだけでも迷わずに距離を稼げるのは、どちらかといえば後者の小池新道側だろうか。
行先を定めて新穂高温泉の無料駐車場で日没まで仮眠するも、突然明かりと自動販売機が恋しくなって10km離れた「道の駅 奥飛騨温泉郷上宝」に車を移して寝直す。
起きたらすぐに出発するのを無意識のうちに重圧に感じているのだろうか。
いかん、自分が向かう山の大きさに今ごろ気づいている。

2009年4月18日(土)


小池新道の入口で朝焼けを迎える。

今の雪の量は、平年のGWよりも少ないらしい。

秩父沢。天気が悪ければ迷い込んでしまうかもしれない。

穂高から日が昇る。

日が照り始めると、まるで雪の砂漠のようだった。

ずいぶん登ったようだ。

雪が落ち着くには、もうしばらく時間がかかるようだ。

焼岳、乗鞍岳

槍ヶ岳と飛騨沢。

穂高岳

ようやく稜線に着いた。

双六小屋に続く稜線。

双六岳に向けて、沢を下るシュプールが認められた。

笠ヶ岳、抜戸岳方面。

鷲羽岳。世の中には、この山を日帰りで滑ってしまう人がいる。

双六岳。今の自分にとってはまだ遠い山だった。

滑ってきた沢を振り返る。

下りは速い。

小池新道取り付きのデブリ

ワサビ平小屋。ここから延々と林道歩き。


1:30に起きて道の駅を出発、新穂高温泉の無料駐車場に車を停めて2:30に出発する。
しばらくは林道歩き。ほどなく雪が出てくるが所々で途切れるためしばらくスキーは担いだまま。
笠新道の登山口の手前でヘッドライトの電池の残量が少なくなって明るさも半分になる。しまった、今回に限って替えを持っていない。
夏山やGWに通ったことのある道とはいえ、ヘッドライトだけだと地図にない橋に迷い込んで引き返したり、デブリの山をスキーを担いで愚直に乗り越えたり、思った以上にロスが多い。結局ワサビ平の小屋まで2時間近く要してしまう。
小池新道の入口で夜明けを迎える。目標にしている「双六岳」は、向こうにある「大ノマ乗越」を越えて、斜面を下って、さらに登ったところにある。
双六岳を日帰りすると見栄を切って早立ちしたのはいいけど、この調子ではどうだろうな。今日はいつになく弱気である。


どうしたものか。もやもや考えていると標高1900m付近で大ノマ乗越から下ってくる単独の山スキーヤーとすれ違う。サングラスにノーズガード。もしやと思って声をおかけするといつも読んでいるサイトの方の相棒、「名人」ことFさんだった。
Hさんとともに北アルプスの奥深くにある「水晶岳」を日帰りする予定で新穂高温泉から入山するも、事情あって独り下山を余儀なくされたことのこと。*1
林道の脇に停めてあった車はやはりそうだったのか。もしかしたらこの山域に入っておられるとは思っていたがこういう形でお会いできるとは。
山スキーを始めてから、FさんやHさんの行かれる記録をこれまでずっと読んできました。自分にとっては教科書のようなものなのです。
これまでサイトを読んできて抱いてきた感想、質問をここぞとばかりにぶつける。
気がつけばずいぶん時間が経ってしまっていた。「またどこかでお会いできればいいですね」言葉を交わしてFさんと別れる。


標高2000mから2400m付近が斜度も急になり喘ぐところ。おまけに稜線に登り上げるポイントを東寄りにとりすぎたため直前で西に平行移動を強いられる。今日はルートの読みがさっぱりだ。
大ノマ乗越へは9時半過ぎに到着。この先双六岳を目指すなら、山頂までは標高差300mを一旦下って800m山頂に向けて登る。帰りは逆に300mの登り返しがある。残った標高差と今日の自分のルート読みのまずさを考えるとどうも気乗りしない。大きな山を正面にして心が後ずさりしている、と言ったほうがいいのだろうか。
こういうときは深追いしないほうがいいのだろう。これより奥に入ることは避けて、大ノマ乗越のそばにある「弓折岳」まで登って踏ん切りをつけておくことにする。
大ノマ乗越から100m強登った弓折岳の山頂で休んだあと、山頂から滑り始める。大ノマ乗越から小池新道へは雪庇の切れている箇所を狙ってエントリー。肩で息をしながら登っていた斜面も下りはただ快適なざらめ斜面に変わる。槍・穂高を脇に人もまばらな北アルプスの大斜面をスキーで流す。GWでは味わいがたい贅沢である。途中登ってきた方と数名すれ違い美味しい場面を終える。小池新道の取り付き付近からは猛烈なデブリを注意深く下る。
林道を歩いていると、夜中よりずいぶん雪解けが進んだように思える。新穂高温泉の気温は20度を超えていた。


この日は飛騨市の「割石温泉」に入ったあと高山の古い町並みの雰囲気に浸り、高山から東海北陸道で直接自宅に戻る。
高速道路が値下げされて、これまで通り過ぎていた山のそばの街をじっくり見る余裕が生まれたのはありがたい。

まとめなど

登りで自分のたどったルートを下るときに観察していると、簡単に巻いてしまえるデブリの山を丁寧に登っていたり、大ノマ乗越の直下で登り上げるポイントを間違えてトラバースを強いられていたり、ずいぶん無駄なことをしていたことがわかった。
適切なルート取りがわかっていれば体力も節約できる。逆にルートを見極める目がないとこういう箇所で少しづつ体力を消耗していく。
思いつきで登らせてくれるほど、この時期の北アルプスは甘くはない。

GPSログ(クリックで拡大)

  • 赤は登り、青は登り。

ルート

新穂高温泉-小池新道-大ノマ乗越-弓折岳 を往復

コースタイム

  • 2:30 新穂高温泉無料駐車場(1050m)
  • 4:20-4:30 ワサビ平小屋(1410m)
  • 6:40-8:10 1950m付近(1950m)
  • 9:39 大ノマ乗越(2450m)
  • 10:04-10:22 弓折岳(2592m)
  • 10:26 大ノマ乗越(2450m)
  • 11:45-11:53 ワサビ平小屋(1410m)
  • 12:49 新穂高温泉無料駐車場(1050m)

メンバー

単独

*1:H氏は、双六岳のさらに向こうにある「鷲羽岳」を新穂高温泉から16時間かけて日帰りされている。「鷲羽岳 - YASUHIROのマウンテンワールド」に記録が掲載されている。