海から始める山スキー - 日本海-笹倉温泉-焼山北面台地-焼山

そのスケール、全身で受け止めよう。

今年も行こう、あの場所へ。
3月21日(土)は、日本海から新潟県の焼山(やけやま)の様子を見てきました。

記録など

2009年3月20日(金)

この土曜日は全国的に晴れの予報とのこと。これは長いルートに挑戦できるまたとないチャンスである。
自宅に戻ったあと自転車を車に積んで夜の北陸道をひた走り、糸魚川インターを降りて国道8号をしばらく走ったところにあるJR北陸本線梶屋敷駅」に到着、しばらく仮眠を取る。

2009年3月21日(土)


つづら折れの林道を終えたあたりで、空が白み始める。

北面台地の北端に登り上げたところで陽がさし始める。

北面台地で焼山を正面に望む。これからあの山頂を目指す。

左は火打山、右が焼山。

焼山に向かって二人パーティが先に進まれていた。

焼山北面台地の東にある「昼闇山(ひるくらやま)」。

木立がまばらになれば、いよいよ斜面は急になっていく。

ずいぶん登った。そろそろスキーでは登りにくくなってきた。

ラッセルを交替しつつ、噴火口にたどり着いた。

焼山山頂。文字がくりぬかれている。

天狗原山・金山・雨飾山方面。背後は北アルプス

雨飾山。急峻。

天狗原山、金山。真っ白な斜面。

火打山1年前に訪ねたときの記憶を思い出した。

笹ヶ峰方面。

さあ、日本海に向けて下り始めよう。

山頂は強い風、お釜に向けて下る。

標高2170m付近でスキーを履く。手強い急斜面が続いた。

焼山に見守られながらスキーを走らせた。

台地にようやく降りてきた。

林道では全層雪崩が起きていた。

グサグサながらも、橋まで雪はつながっていた。

田んぼの近道を通って笹倉温泉へ。

笹倉温泉MTBと無事に再会した。

下ってしまう前に、一度だけ後を振り返った。

早川橋。ようやく日本海に戻ってきた。

梶屋敷駅。長い一日が終わった。


3時のアラームで目を覚ます。
今日の目的地は「焼山北面台地」。いつもは登山口の笹倉温泉まで車で入るが、今回は趣向を変えて日本海から焼山山頂まで自転車と山スキーを使って目指してみることにした。
笹倉温泉から焼山北面台地のルートは、山頂までの距離が10km強・標高差約2000m弱と日帰りするならば早立ちが必要。さらに今回自転車で進む梶屋敷駅から笹倉温泉までは距離13km、標高差460m。笹倉温泉を出る時間を遅くとも5:00と逆算すれば、駅を出るのは3:30頃が適当だろうか。
スキー一式を背負いヘッドランプを点けて準備完了。国道8号に出てしばらく走ったところにある「早川橋」の欄干に手をかけて県道へ向けて漕ぎ始める。海抜0mからの山スキーのスタートである。
スキーやピッケルをくくりつけたザックを背負って、靴はスキーの兼用靴。慣れない姿勢に体が悲鳴を上げているのか、30分も走らないうちに眼鏡が白く曇り始める。上着を脱ぐと全身から湯気が立っているようだ。今日は長丁場、体力はできる限り温存しておきたい。無理をせず途中2回ほど小休止を入れてほぼ予定通り4:55に笹倉温泉駐車場へ。工事のバリケードMTBをくくりつけて5:00に歩行開始、林道への橋を渡ったところからスキーを履く。
つづら折れの林道を終えたところで空が白み始める。まだ真新しいトレースが数本走っておりありがたく使わせていただく。焼山北面台地の下部は地形を読めなければアップダウンに苦しめられるところだが、最近は入山する人が増えたからだろうか、迷いそうな所にピンク色のリボンが必ずといっていいほどぶら下がっている。
標高1090mのアマナ平を過ぎたあたりで焼山とようやく対面。やや急な斜面をやりすごして焼山北面台地の北端へ。モノトーンの焼山と火打山を正面に望む。
火打山を目指す単独行、2人パーティとあいさつを交わし先へ進む。焼山に続くトレースの先には別の2人パーティが歩いている。一時追いつきそうになるも、写真を撮ったりお菓子を食べているとすぐに距離が開いていく。焼山の山腹部が始まる標高1800mを過ぎてからは次第に等高線も込んでくるところなのだが、氷化した斜面を絶妙に避けて後続が歩きやすいように登られている。ずいぶん場数を踏んだ方なのだろうか。
標高2000mを過ぎるとスキーアイゼンを使ってもいよいよ氷に刃が立たなくなってきた。ここで自分もスキーを担いでアイゼン歩行に切り替える。
先行されている方にお話を聞くと、滋賀県にお住まいで山スキーの記録などを扱ったサイト「忍者ホームページ[準備中]」を運営されている方*1。僕自身、こちらの記録を見ながら夏山ハイキングの計画を立てたこともある、自分にとっては馴染み深いサイトである。
アイゼンに切り替えて以後もちゃたろうさんたちで高度感のある斜面を先行、ところどころ膝下程度のラッセル。標高2200m付近、外輪山の取り付き付近で先頭を交替させていただく。的確で歩きやすいトレースに導かれて、労せずにここまで来れた。このまま最後までお世話になっては罰が当たってしまう。
「あともう少し」我慢の登りをしばらく続けて噴火口にたどり着く。外からは想像もつかない、一面雪に覆われた穏やかな世界が広がっている。
カメラとお菓子以外は置いて空身で山頂へ向かう。日本海を出発して8時間、なんとか無事に導いていただいた。風はさすがに強く、火打・雨飾・北アルプス方面の展望をしばらく楽しんで早めに噴火口へ戻る。
ちゃたろうさんにトレースのお礼を述べて、ひとあし先に下り始める。焼山の山頂からはいくつかラインが取れそうに思えたが、今日は冒険はせずもときた道を着実に戻ることにする。
岩がちの外輪山の縁を過ぎしばらく下って様子をうかがうも、アイスバーンで間口の狭い急斜面を自分のスキルでこなせる自信もない。逡巡を繰り返しつつスキーを履いたのは標高2170mから。ガリガリにエッジを利かせて恐る恐る滑り始める。
斜面の様子は氷の板の上に数cmの新雪が乗った状態。斜滑降すると新雪が音もなくサーッと崩れ落ちる。数度目の斜滑降で、剥がれ落ちた斜面の氷とともに斜面もろとも引きずられる。一瞬のできごとだったが数mはずり落ちただろうか。氷の板の流れが途中で止まったため雪の底に埋まることは避けられたがさすがに身の縮む思い。ここからしばらく、標高2080m付近まではキックターンで用心深く下るほかなかった。
登りでスキーからアイゼンに切り替えた標高2000m付近からは斜度も雪も緩んでいよいよ快適に。はるか遠くに見えた台地が次第に目の前に迫ってくる感覚は空から地上にら舞い降りる感覚に近いとでもいえばいいだろうか。
この日は両手に数えて余るほどのパーティが焼山北面台地に入山しているようで、スノーボーダーも含めてすいぶん大勢の人を見かける。帰りにルートを誤ることもないだろう。
雪が快適だったのは台地の北端まで。そこから下はすっかり緩んで水を含んでしまってもうグサグサ。
林道の入口の橋で雪は途切れる。スキーをザックにくくりつけて田んぼの近道を通って笹倉温泉で無事MTBと再会を果たす。
振り返って焼山の山頂に向けて目を細めたあとは日本海に向けて下り始める。爽快なダウンヒルといきたいところだが道路の勾配が緩いためかペダルを回さないと前に進まない。このときになって荷物をやけに重く感じ始める。海はまだか。だるくなり始めた頃にようやく北陸自動車道の高架をくぐり、JR北陸線のガードをアップダウンして早川橋に戻る。なかば放心状態で記念撮影を済ませて、重いザックに難渋しながら梶屋敷駅に戻ったのは15:01。下りの急斜面では肝を冷やした場面もあったが、なんとか明るいうちに無事に帰ってくることができた。


この日は宇奈月温泉で汗を流して、富山県内の駅の駐車場で車中泊。
日曜日は朝4時に起きて県内のスキー場の様子をうかがうも、吹き降りの雨に登山は早々と断念。
これまで立ち寄る機会のなかった川合田温泉片山津温泉に浸かりつつ、下道を400kmドライブして夕方過ぎに京都に戻った。


以前から秘かに暖めていたルートをなんとか歩き通すことができた。
無事に歩けたのは、焼山山腹の登りの場面でトレースを使って体力を温存できたおかげである。
出発前に気になっていた外輪山直下のルートの取り方など、的確で歩きやすいトレースを残してくれたちゃたろうさん一行がいなければ、精神力や時間を浪費していたことは間違いない。
苦しい場面でご一緒させていただき、ありがとうございました。

GPSログ(クリックで拡大)

  • 今回のルートの全体図。
  • 梶屋敷駅」-「早川橋」-「笹倉温泉」の間は自転車、「笹倉温泉」から「焼山」まではスキーを使いました。
  • 赤は登り、青は下り。

  • 笹倉温泉から焼山山頂までのルートを拡大したもの。
  • 赤は登り、青は下り。

ルート

JR梶屋敷駅-早川橋-笹倉温泉-アマナ平-焼山北面台地-焼山山頂 を往復

コースタイム

  • 3:05 起床
  • 3:33 JR梶屋敷駅(6m)
  • 3:35 早川橋(0m)
  • 4:55-5:00 笹倉温泉(460m)
  • 6:50 アマナ平(1030m)
  • 7:38 焼山北面台地北端(1250m)
  • 9:55-10:05 標高2000m、アイゼン装着
  • 11:15-11:25 焼山噴火口、荷物デポ(2340m)
  • 11:29-11:35 焼山山頂(2400m)
  • 11:40-11:45 焼山噴火口(2340m)
  • 12:08-12:15 標高2170m、滑降開始
  • 12:50-13:00 焼山北面台地北端(1250m)
  • 13:12 アマナ平(1030m)
  • 14:06-14:20 笹倉温泉(460m)
  • 14:53-14:58 早川橋(0m)
  • 15:01 JR梶屋敷駅(6m)

メンバー

単独

*1:3月21日の記録は「忍者ホームページ[準備中]」にアップされている。サイトのほかに、「ちゃたろう山日記+」というブログを開設されている。