登って滑って、登る山 - 石徹白 薙刀山 - 願教寺山
はやる心を抑えながら。
楽しいことも、渋いことも一日で。
3月15日(日)は、岐阜県の石徹白にある「薙刀山」から「願教寺山」を歩いてみました。
記録など
2009年3月15日(日)
時期外れの大雪。登山口の白山中居神社には路面にもうっすら雪が。
和田山牧場。ひとまず目指す「薙刀山」は平らなピーク。
白山南方の山々。まだこの時期は遠い山だ。
薙刀平から「野伏ヶ岳」を見る。今日はパス。
薙刀平を詰めて、まずは薙刀山山頂へ。
薙刀山から日岸山への鞍部への下り。パウダーが残っていた。
シールを貼りなおして、日岸山へ登り返す。
日岸山からこの日の目的地を望む。岩が露出した右のピークが目的地の「願教寺山」。
大斜面をかっとぶ大ソロさん。
日岸山の下りを振り返る。カチカチのアイスバーンで肝を冷やした。
よも太郎山から。今日の目的地・願教寺山のいかめしい山容。
よも太郎山と願教寺山との鞍部に向けての下りで。ここでもパウダー。
願教寺山の山頂付近で。よも太郎山から下ってきたシュプールを確かめることができた。
願教寺山山頂。ガスが晴れて白山が姿を現す。
願教寺山南面の斜面。石徹白の奥にこんな斜面があるなんて知らなかった。
下まで下って林道沿いに快適に帰れるだろう、とこのときは思っていたのだけど…。
沢は割れていてスノーブリッジの横断あり、渡渉あり、トラバースあり、デブリあり。林道沿いは渋い場面が続いた。
ようやく夏道の登山口。だがここから登山口まではあと8kmを歩かなければならない。
4時起床、石徹白(いとしろ)の白山中居神社には6時には到着。30分程度仮眠して6:45に出発する。
今日は石徹白の山にやってきた。まずは薙刀山を目指して、天気がよければ遠くへ足を延ばしてみようという計画だ。
林道をショートカットしつつ和田山牧場へ。立派なトレースを作ってくれたパーティにようやく追いつくと、野伏ヶ岳の北東尾根を目指すという4名組。ラッセルのお礼を言ってここからは自分たちでトレースを開く。
推高谷を横断して薙刀平までのやや急な登りを終えると薙刀平。広い雪原をじりじり登って今日一番目の「薙刀山」へ。心配していた天気は回復傾向にあるようだ。ひとまず目標を薙刀山の3つ先にあるピーク「願教寺山」に定めて先へ進むことにする。
滑りは大ソロさん先行。自分もスキーを履いて一度取り回すが、ここでスキーが外れる。雪がついた状態でスキーを履いたのがまずかったのだろうか。取りに行こうとするとスキーが斜面を滑り出す。取り外しを厭って、最近は流れ止めをつけずに山に登るようになっていた。これはちょっとまずいか。先行されていた大ソロさんが気づいて身を挺してスキーを止めてくれる。大ソロさんがいなければスキーを探して斜面を延々と降りていかなければならないところだった。
気を取り直して滑り始めるとなんとパウダーが残っている。今回板を替えたのが効いているのだろうか、ふかふか面白いように身体が浮く。諦めていた新雪を3月の石徹白で楽しめるとは。心躍らせつつ鞍部でシールを貼りなおして次のピークへ。
第二のピーク「日岸山(1669m)」の次に目指す第三のピーク「よも太郎山」の標高は1581m。一見、ピークともいえない単なるコブのような山だ。あれがよも太郎山か。登り返しの始まる鞍部までわずかだしシールをつけたままひとまず滑り込んでみようか。
なかば楽勝気分で斜面に入ってみると、テカテカのアイスバーン。北面の斜面だからか、陽射しが十分にあたっていないようだ。先行して斜面の様子を見た大ソロさん曰く「シールをつけたままでは不安定。シールを外してエッジを利かせて滑り込んだほうがいい」。鞍部までは少し下れば着くように思えてしまうのだが、誤ってバランスを崩そうものなら大斜面の下にある数百m下の樹林に叩きつけられてただではすまないだろう。ここで転倒は許されない。斜面の途中で急遽スキーを外してシールを胸のポケットにしまいこむ。板を縦にした状態でシールを外そうとするとシールが風にはためいて折りたたみに困る。さきほどの薙刀山山頂でスキーを滑らせてしまった記憶が蘇ったのか、体勢に余裕がない中でスキーを落としてしまわないか気が気でない。ここでも大ソロさんに様子を見ていただき精神的に助けられる。
鞍部から下は大斜面が広がる。ここで大ソロさん「ここは滑らないといけないでしょ」ザックを鞍部に残して一人小刻みなターンで斜面の下に消えてしまう。標高差300mは下られただろうか、信じられない体力である。登り返される間、僕は体力を回復させてお菓子を食べながら写真をのんびり撮ることにする。
鞍部からだと、薙刀山からは遠くに見えた「願教寺山」がいよいよ間近に迫る。見るほどに岩がところどころ露出していていかめしい。ピークの近くの等高線は線が詰まっているし、最後はアイゼンが必要か。覚悟して登りにかかると時間帯が午後に差し掛かっていたからか、雪が適度に緩んでいて着実に登ることができた。
目的地の第四のピーク「願教寺山」には13:20に導かれる。登山口を出発してから6時間半強。ラッセルありの条件でここまで来れるとは思っていなかった。
山頂に着くと白山にかかっていたガスが晴れる。山の祝福を浴びているような気持ちになる。今日も来てよかった。
願教寺山からは南面を滑ってみる。時間帯が午後を回っていたため雪はやや固めだが「これが奥美濃の山か」と思えるほどスケールの大きい斜面。おそらく、この日で一番頬を緩ませた時間であったに違いない。
さて、ここからどうやって登山口に戻ろうか。
一旦谷を滑ったあと薙刀山方面へ登り返して元来たルートに合流するのが疲れはするが確実で安全なのではないかとする大ソロさん、林道に下りきってしまって平坦な道を歩くのが確実ではないかとする僕。協議ののち、譲っていただいて僕の案で行くことにする。
だが、林道に下るルートは実に渋いものだった。
沢は分厚い雪に挟まれるようにぱっくり割れていて細く残ったスノーブリッジを「崩れませんように」と祈りつつ半ば賭けで通過。地図で所在をつかんでいた橋が見つからず右往左往*1、橋の前後の道はとうに崩壊していて取り付くまで河原を徒渉、林道に出るとデブリ*2で埋まって急斜面状になった路面を延々と横断、最後の数kmは雪が途切れてスキーの着脱を頻繁に繰り返してもうぐったり。
登山口には日没前の17:46に到着。最後に自分が下したルート取りのまずさも災いして11時間行動となってしまった。
この日は郡上の「ベトコンラーメン」で夕食。美並インターから高速道路に乗って帰宅する。
3月の石徹白で予想外のパウダー、想像以上のダイナミックなルートを味わうことができた。
とはいえ、自分自身に残る気の緩み、まずい判断。随所で丁寧にフォローしていただいた大ソロさんの気遣いなしには、最後まで無事に歩くことはかなわなかっただろう。
長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。
メンバー
大ソロさん、hatayasan