文章から人を感じたときに使いたくなる言葉を考えると - におい、香り、雰囲気
文章から「人」を感じたときに使いたくなった言葉のことなどを、忘れないうちに書き留めておきたいと思います。
「中の人がもやもやと文章から立ち上がってくる感覚」
たとえば普段購読しているブログから、書いている人の嗜好や考え方がいつも以上に伝わってくるような文章に触れたとき。ブックマークする場合など、コメントについ感想を添えたくなることがある。
「中の人がもやもやと文章から立ち上がってくる感覚」を簡潔に説明するにはどのような言葉を選べば適当なのだろうか、思いつきを並べれば以下のような感じだろうか。
香り - 「中の人の香りを感じました」
- 洗練された、ややかしこまったイメージ。
- ともすれば、当人が意識して漂わせるもの。
- 「香水の香り」
- いわゆる褒め言葉ではあるのだろう。
- だが華美で希少性が高いゆえに、その場で完結してしまう。親密、というニュアンスはおそらく含まれていない。
- 「もう少しその人の文章を読みつづけたい」と願うならば、このような儚くも読める言葉を選ぶのは、おそらく本意ではない。
匂い - 「中の人の匂いを感じました」
- 当人が意識しなくても、どこからか漂わせるもの。
- 「香り」がそのときだけしか感じられない刹那的なものとするならば、「匂い」は当人の周りに残り続けるもの。
- 鼻で感じるだけでなく、心でも感じるもの。内面から滲み出してくるもの。
- 「懐かしい匂い」
- ただ、この言葉を使うのは、その人とある程度関係ができていることが前提になりそうだ。
- その人は自分のことを知っているかどうか、その人とはどのくらいやりとりしたことがあるかなどの確証がなければ、思うことはあっても記すことには勇気が要るかもしれない。
臭い - 「中の人の臭いを感じました」
- 直截。生々しい。
- 「まとわりつく臭い」
- まあ、おどけたりしない限り、人に向けて使うことは滅多になさそうだ。
雰囲気 - 「中の人の雰囲気を感じました」
- ニュートラルな語感。
- 「香り」「匂い」「臭い」をすべてカバーする、オールラウンドな言葉。
- 向こうにいる人との距離感が測りにくいネットだと、とても便利なフレーズのように思える。
- ただ、無難で踏み外すおそれがない分、記憶には残りにくいだろう。
で、何が言いたくなったかというと
伝えたいことがある場合、こちらと向こうとの間に横たわる距離感に応じて、選ぶ言葉は自然に変わっていく。
それはかしこまりすぎても伝わらないし、逆にくだけすぎてももとの意からは離れてしまう。
そして自分の思いにあてはまりそうな言葉を見つけたときほど、表に出そうとする段になって「これでよいのだろうか」と立ち止まる。
だから、あたかも向こうを気遣うように、いや正確には自分が傷つかないように、球威はないけれどストライクゾーンの広い無難な球で、お茶を濁してしまいたくなる。
相手を、あるいは自分をもう少し深く知ることができれば、もっと確かな形で考えていることを伝えることができるのに、ともどかしく思いながら。