どう使おうか、idコール - 「あけすけさ」こそ「はてならしさ」なのか

はてなブックマークのコメント欄にユーザIDを書き込めばはてなメッセージが送信される「idコール」。
しばらく見ていて感じたことなどを、少しだけ書き留めておこうと思います。

idコール以前 - はてなブックマーク版「耳をすませば

はてブのURLはわかるけど、その人がブログを持っているかどうかはわからない。
そんなユーザに自分の思いを伝えるには、どうすればいいんだろう。
はてなブックマークツールともコミュニティともつかなかった頃、ささやかな工夫がはてブユーザの間で考えられたことがありました。
名づけて「はてブ版 "耳をすませば"」*1

  • ユーザがブクマしそうなエントリを先回りしてブクマする
    • ユーザのブクマの傾向を掴んで、関心のありそうなエントリにブクマを先回りしておくことで、自分を「似たような趣向を持つユーザ」と認知してもらえるだろう。サプライズを添えるなら先回りしたコメントに「やあ、○○さん、僕とお話しませんか?」コメントを予め仕込んでおく。
  • ユーザがブクマしたエントリに後からブクマする
    • ユーザがブクマした後にさりげなく追随ブクマして、自分の存在をアピール。

忘却防止。 - はてブユーザに想いを伝えるには〜思わぬ敷居、届かぬ想い*2

9月6日にはてなブックマークに実装された「idコール」。*3
この機能が実装されたことで、ブログを持っていないブックマークのみのはてなユーザにも、確実に思いを伝えられるようになりました。
先回りブクマに、ささやかな置き手紙。
はてブの薄暗い片隅でひそやかに行われてきた営みにすがる必要は、もうなくなりました。
「不確実だったことが、確実にできるようになった」。
機能が充実して本来なら嬉しいはずなのに、ほのかに抱いていた思いを突然白日の下に晒されたような「あけすけさ」を僕は感じてしまいました。
なぜ、そのような感情をもよおしたのでしょうか。

張り巡らされる回路 - 観客同士のコミュニケーション

はてなブックマークの役割は、主に二つあるのではないかと思います。

  1. 記録すること。
    • 興味を持った記事をブックマークして、いつでも参照できるようにしておく。
    • 興味を持った記事にコメントをつけて残すことで、記事が消えても内容を思い出せるようにしておく。
  2. 伝えること。
    • ブックマークした記事を書いた人に、自分の感じたことを伝える。
    • 同じ記事をブックマークした人に、自分の感想や感情を伝える。

これまでのはてなブックマークが主に担っていたのは「記録する」機能。
記事を書いた人とブックマーカーの間で「伝えあう」関係は成り立っていたとはいえ、ブックマーカー同士で感じたことを「伝えあう」には、個々のユーザの工夫に頼るほかありませんでした。*4
idコールで変わったのは、記事を書いた人に対してだけでなく、同じ地平にいるブックマーカーにもメッセージを送れるようになったということ。
はてブが、舞台と観客の間だけでなく、観客同士のコミュニケーションもサポートするようになった、ということになるのでしょうか。

「場」の指向を強めるブックマーク空間

コミュニティ化するソーシャルブックマークって、どんなサービスなんだろう。
はてブはコミュニティを、先発のdel.icio.usツールを目指しているという話を思い出しました。

はてなブックマークとよく比較される海外のソーシャル・ブックマーク・サービスにdel.icio.usがある。しかし、del.icio.usではコメント論争に関してあまり目にすることが無い。これはなぜだろうか?私はサービスの思想の違いなのではないかと考える。del.icio.usツールであることを目指しているのに対して、はてなブックマークはコミュニティであろうとしている。これは「良い悪い」の問題ではない。単に違うということだ。
はてなの十庵 - はてなブックマークのコメント論争は必然か?

はてブを自分専用のスクラップのつもりで使っていたら、いつの間にか縦に横にコミュニケーションの回路が張り巡らされていた。
ブックマークコメントに☆がつけられる*5ようになって、ツールとして使っていたはてブに次第に「場」を感じ始めた矢先のこと。
idコールが実装されたはてブに「あけすけさ」を感じたのは、心の準備をする前に丸裸にされたような「居住まいの悪さ」を覚えてしまったからなのではないか、とふと思いました。

「あけすけさ」こそ「はてならしさ」なのか

コミュニティ化を進めていくはてブを使っていて、ぼんやり感じたこと。

  • 同じソーシャルブックマークにあって、del.icio.usはてなブックマークは異なる進化を歩みつつあることがはっきりとわかってきました。
  • 縦横にコミュニケーションの回路を備えたはてブは、情報収集の機能だけでなく、Twitterのようなミニブログよろしくブックマーカー同士で気軽に情報交換する機能も取り込んでいくとも考えられそうです。
  • もしかしたら、コミュニケーションの風通しが異常によい「あけすけさ」こそ、「はてならしさ」と見ることもできるのかもしれません。言葉でつながるはてなダイアリーキーワード然り、微かな心の動きを伝えられるはてなスター然り、フィードの公開を前提にしたはてなRSS然り。つながる仕組みをリリースするたびに、いつもユーザを惑わせつつも、その独特な空間に中にいる者を惹き付けていくはてなIDコールも、やがてはてブにはなくてはならない機能として、いつの間にか馴染んでいくのでしょうか。
  • はてブをより心地よい空間にするための一つの答えに「IDコール」があるとするならば、del.icio.usも体験することのなかった進化のフェーズには何があるのだろう。あともう少しだけ、その先を見届けたくなってきました。