こんな本読んだ - 『奇跡と呼ばれた学校 国公立大合格者30倍のひみつ』

奇跡と呼ばれた学校―国公立大合格者30倍のひみつ (朝日新書 25)

奇跡と呼ばれた学校―国公立大合格者30倍のひみつ (朝日新書 25)

私学が圧倒的に強い土地柄にあって、公立でありながら1年間で国公立大の現役合格者を100人以上増やした校長の手記。
「奇跡」と呼ばれた学校とは、京都市立の高校「堀川高校」。
いくつか気になったところをメモしておきます。

人の欠点のみを見て否定してしまったら、人事異動で人を入れ替えることでしか、改革は進まなかったでしょう。しかし、人を入れ替えることで解決しようとすると、永遠に替え続けることになってしまう。
74頁

堀川高校進学校への脱皮を決めたのは校舎の建て替えというきっかけがあったのですが、教師を精鋭のメンバーに入れ替えたわけでは決してなく、これまでの人事で粛々と行ったそうです。
これまでクローズドだった授業を公開、お互いのよいところを共有することで教師の自覚を促すシステムを作り上げました。

「自分で考える」授業

堀川高校の進学コースの目玉である「探求科」と呼ばれるコースには、単に受験の知識を詰め込む授業だけでなく「探求基礎」という、大学でいうゼミのような授業があるそうです。自分で考えたテーマに2年間かけて取り組み、大学生顔負けの「学びの作法」を身につけていきます。

負荷をかけて知識を身につけ、それを具体的に展開する。そういう取り組みを介して、失敗や小さな挫折を経験し、生徒は自分の進路へと収束していきます。
大事にしていきたいのは、「負荷・展開・収束」というスパイラルです。
127頁

自分のなかから生まれる好奇心を正面からぶつけることで、血肉になる学力が培われていく。
堀川は「SSH指定校」*1。大学院生や一流の研究者の話を聞き、直球で質問できる環境に恵まれていることも大きいのでしょう。

節目を前に読んで元気をもらおう

自分の受験した頃を振り返ってみれば、とりあえず大学に受かることが目標で、その後自分がどのような進路をとるかまで思いをめぐらせる余裕は、あまりなかったように思います。
受験の周辺に限らず、就職や転勤といった節目に読んでも勇気づけられる本だと思いました。

*1:スーパーサイエンスハイスクール。科学の担い手を育てるために科学技術・数学・理科を重点的に教育する研究指定校。指定されれば文部科学省から重点的に予算が投じられる