岳人 2007年2月号

岳人 2007年 02月号 [雑誌]

岳人 2007年 02月号 [雑誌]

特集は「雪山を登る」。
第二特集に京都近郊の低山「比叡山系」のルートを紹介した記事が。
地元に住んでいるのに、紹介された10のルートのなかでこれまで登ったことがあるのは大文字山だけでした。
歴史の重みを感じながらすぐそばの山に登るというのも、自分の世界を拡げるきっかけになるかもしれません。

3年前の記憶

2月号で個人的に注目したいのは、2004年2月に起きた関西学院大学ワンダーフォーゲル部の遭難事故*1を6ページにわたって総括した記事。
事故のあった3年前のその日、彼らが立往生していた福井県の「大長山」から数km離れたところ*2に入っていました。
敗退覚悟でスキー場の終端からスキーを履いて取り付いたはいいけれど、吹雪で深雪のなか身動きすらままならず。

高速道路の路面は真っ白。山はすごいことになっていそうな予感がする。(中略)
一歩踏み出すと底なし沼のように足をとられ、身体ごと雪に沈んでしまう。雪を両手でかき分けひざで面を固めて、全身這いつくばるように山頂に到着。ゲレンデ終端から50m進むのに60分を要する。
2004年2月7日の日記

目の前にあるピークがあまりにも遠い。
ほうぼうの体で下山した直後に車の中で耳にした事故を人ごととは思えず、救助の様子からその後の顛末までその行方に注目していました。

働きながら山に登る身だからこそ

事故の原因は「学生であるがゆえの経験不足」とメディアで痛烈に批判されましたが、普段トレーニングを習慣づけている彼らよりも、むしろ社会人で山に登る身こそこの事故から多くを学ぶべきではないかと思い続けています。
自分自身、働きだしてそれなりに行動範囲は拡がった一方で、学生時代のように長い期間山に入れる機会はやはり減りました。
「濃い」山行を気軽に行えなくなっただけに、長い休みが取れたときは欲求を抑えきれず、自分の実力で行けるか微妙なエリアに食指を伸ばす。
この傾向は、就職、結婚。自分を取り巻く環境が変わるごとに少しずつ強まっていることを認めざるをえません。
安全に山に臨むために心がけたいこと。
記事に記されていた下記のことばを、何度も反芻したいと思いました。

経験とは登山歴20年やヒマラヤに行った回数だけでは、単純に測れない価値である。限られた条件の中のラッキーで済んだことや連れて行ってもらい登れた登頂記録だけでは、経験が深いとはいえない。(略)
山の現場では予想を超えた状況にもなる。そんなとき、現場で冷静になれと言っても無理である。(略)
「なんとかなるさ」ではなんともならない。基礎のある人はいいかもしれないが、いつも何とかなってきた人は実力をつけたと言えるだろうか。(略)
勘ではなく、ひらめきとして得たアイデアを論理的に再構築すれば、しっかりとした行動予定が立てられる。
危急時の対応と生還の道 - 関西学院大学ワンダーフォーゲル部大長山遭難に学ぶ 41頁

追記

「山と渓谷」の2007年2月号も、遭難を扱った特集を組んでいるようです。下記のエントリでまとまった考察を読むことができます。

*1:当時の新聞記事は「神戸新聞 - ワンゲル遭難/「なぜ」を徹底究明したい」がまだ閲覧できました。

*2:スキージャム勝山」から「法恩寺山」