こんな本読んだ〜『グーグル八分とは何か』

グーグル八分とは何か

グーグル八分とは何か

前から気になっていた本を手に取ってみました。著者は「悪徳商法?マニアックス」の中の人。

「不利益である」ゆえの検閲

紙や本に書き留めたURLを一生懸命アドレスバーに入力していたのはもう昔。ウェブで調べ物や探しものをすることを「ググる」と表現するように、Googleは今やネットのインフラとして完全に定着した感があります。
グーグル八分」とは、Googleの検索結果から特定のページが削除されること。
とりわけ、「不利益である」という相手の一方的な主張によって、検索結果が恣意的に検閲されることを指します。

Google八分の行われるケース

グーグル村上社長“Google八分”を語る:ITpro」によると、Googleが情報を削除するケースとして3つの種類があるそうです。

  1. 犯罪にからむサイト
  2. SPAM的な手法によって検索順位を向上させるサイト
  3. 個人や法人から『このサイトは自分の権利を侵害している』というクレームがあったサイト

Googleがページを削除する基準は「不利益な情報であること」。
しかし、その「不利益」が誰にとっての不利益なのか。
本書によると、基準もプロセスも明らかにされることなくある日突然「グーグル八分」に至るということです。

手っ取り早い企業防衛の手段

本書には「グーグル八分」の事例がいくつも紹介されています。
中には、企業の商品に対して批判的な意見を述べたページがグーグル八分に遭っているというケースもありました。
グーグルに申請すれば不都合な情報が消せることが広まれば、グーグル八分は手っ取り早い企業防衛の手段として普及していくのかもしれません。

訴訟費用が必要な上、相手に反論の機会が与えられる裁判とは異なり、グーグル八分であれば一方的な主張によって、批判や都合の悪い事実を封じ込めることができます。
103頁

自由な意見が飛び交うはずのネットも、リアルの力関係に従って秩序づけられていくのでしょうか。

Googleの寡占化の先にあるもの

グーグル八分が普及していくことを長期的にとらえてみればどうでしょうか。
Google八分が申請されたページの情報をGoogleが独占することで、申請した者も含めてGoogleには頭が上がらなくなっていきます。
全てを知っている「司祭」としての権力をGoogleは帯び始めるでしょう。やがてGoogleの提示する世界観に思考は規定されていきます。グーグル八分は、googleの寡占化にも一役買っているとも本書では考察されています。
Googleで情報収集する場面が増えるほどに、Googleで探せなかった情報を「ネット上にはない」と判断してしまう傾向が高まっている*1ことを、僕自身残念ながら認めざるを得ません。
検索エンジンによって自分たちの思考や行動が規定されているとするならば、口当たりの良い情報に浸かったその先には何が待ち受けているか、まだその先は見えません。

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書評
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*1:判断してしまうというより、次に起こす行動への敷居をものすごく高いと感じる