こんな本読んだ〜『グーグル八分とは何か』
- 作者: 吉本敏洋
- 出版社/メーカー: 九天社
- 発売日: 2006/12
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 189回
- この商品を含むブログ (72件) を見る
「不利益である」ゆえの検閲
紙や本に書き留めたURLを一生懸命アドレスバーに入力していたのはもう昔。ウェブで調べ物や探しものをすることを「ググる」と表現するように、Googleは今やネットのインフラとして完全に定着した感があります。
「グーグル八分」とは、Googleの検索結果から特定のページが削除されること。
とりわけ、「不利益である」という相手の一方的な主張によって、検索結果が恣意的に検閲されることを指します。
Google八分の行われるケース
「グーグル村上社長“Google八分”を語る:ITpro」によると、Googleが情報を削除するケースとして3つの種類があるそうです。
Googleがページを削除する基準は「不利益な情報であること」。
しかし、その「不利益」が誰にとっての不利益なのか。
本書によると、基準もプロセスも明らかにされることなくある日突然「グーグル八分」に至るということです。
手っ取り早い企業防衛の手段
本書には「グーグル八分」の事例がいくつも紹介されています。
中には、企業の商品に対して批判的な意見を述べたページがグーグル八分に遭っているというケースもありました。
グーグルに申請すれば不都合な情報が消せることが広まれば、グーグル八分は手っ取り早い企業防衛の手段として普及していくのかもしれません。
訴訟費用が必要な上、相手に反論の機会が与えられる裁判とは異なり、グーグル八分であれば一方的な主張によって、批判や都合の悪い事実を封じ込めることができます。
103頁
自由な意見が飛び交うはずのネットも、リアルの力関係に従って秩序づけられていくのでしょうか。
Googleの寡占化の先にあるもの
グーグル八分が普及していくことを長期的にとらえてみればどうでしょうか。
Google八分が申請されたページの情報をGoogleが独占することで、申請した者も含めてGoogleには頭が上がらなくなっていきます。
全てを知っている「司祭」としての権力をGoogleは帯び始めるでしょう。やがてGoogleの提示する世界観に思考は規定されていきます。グーグル八分は、googleの寡占化にも一役買っているとも本書では考察されています。
Googleで情報収集する場面が増えるほどに、Googleで探せなかった情報を「ネット上にはない」と判断してしまう傾向が高まっている*1ことを、僕自身残念ながら認めざるを得ません。
検索エンジンによって自分たちの思考や行動が規定されているとするならば、口当たりの良い情報に浸かったその先には何が待ち受けているか、まだその先は見えません。
関連する情報
書評
- Future is mild:グーグル八分とは何か
- 検閲がやむないとしても、手続きや基準を透明かつ明確にすることが必要だと述べておられます。
- 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」 - 「グーグル八分とは何か」(吉本敏洋)
- すれ違う利益を公平に扱うことの難しさを、グーグル八分の事例から述べておられます。
グーグル八分に関する記事
- 圏外からのひとこと 「Google八分の刑」という難問
- アンカテ(Uncategorizable Blog) - Googleがしている明白に邪悪なこと
- 悪徳商法?マニアックスに関するGoogle八分問題を解決しないまま、「不当な検閲はしてない」と日本法人の社長がメディアを通して訴えているのはおかしい、という話。
- ITmedia News:「Google八分、知ってますか?」眞鍋かをりが“国策検索”アピール
- 忘却防止。 - 見えない権力〜『グーグル 既存のビジネスを破壊する』
- 佐々木俊尚氏の『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)』にもGoogle八分について触れた箇所があります。
- ネットの動向をおさらいしたければ、佐々木俊尚氏のテキストに親しむのが最も近道ではないかと最近思うようになりました。
- 闇鍋ブックマーク / google / censorship
- Googleが検閲を行っていることに関して、これまでブクマした記事。中国の検閲も含みます。
*1:判断してしまうというより、次に起こす行動への敷居をものすごく高いと感じる