こんな本読んだ〜『下流喰い』

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

階層格差が拡がってまちが廃れるほど消費者金融も儲かっていくという話。
サラ金に足を突っ込むとどのような目に遭うか。
この本を読んでおけば、少なくとも普段の浪費癖を戒めるきっかけは得られるはずです。

泥沼・ババ抜き

消費者金融がいかに特異な業種であるか。下記の文章を引用するだけで充分でしょう。

奇妙に聞こえるかもしれないが、消費者金融はもともと収入の多いものにはあまり貸したがらないものなのだ。
84頁

元利均等できちんと払い込んでくれる客よりも、月々の金利だけを払い続ける客の方が「優良顧客」。

泥沼から抜け出そうとする客を、もう一回、泥沼に引きずり込む。そして、顧客が早晩、ポシャるであろうことは完全に無関心−それが、今の消費者金融のビジネスモデルなのであり、そんな焼畑農法のような商売を「悪魔的ビジネスモデル」と呼ばずして、いったい何と呼べばいいのだろう。
89頁

一方で、消費者金融の大手は1.61%(プロミス)〜2.2%(武富士)の低金利資金を調達。
武富士の場合、貸付金の8割近くを25〜27%の金利で貸し付け。
「100人に貸せば10人が返してくれない」リスクを見積もっているとはいえ、儲かって仕方がないのです。

要は「ババ抜き」の論理で、最後にババを引いたやつが馬鹿なのであって、そこでゲームは終了。ババというのは、いわゆる多重債務者と同義語である。(略)
業者間を転がされればされるほど、当然、債務者の劣化は進む。ババ抜きを楽しもうにも、肝心のカードとしての概観自体がヤレてくるので、それがババであるということが傍目にもわかるようになってしまう。
122頁

大手の消費者金融に相手にされなくなった多重債務者が、いわゆる闇金に流れて身ぐるみ剥がされる、というスパイラルが厳然として存在するようです。

政策提言もある

現場の陰惨なレポートだけでなく政策提言にも踏み込んでいるのがこの本に深みを与えています。
小泉・竹中ラインでアピールされた「雇用のセイフティネット」の一環として雇用創設や職能訓練が進められていますが、筆者は「格差社会の底辺にいる単純労働者やリストラされたサラリーマンには届いていない」と危惧しています。

政治のトレンドとして、いま流行の脱ダム宣言、脱公共事業など立派なお題目を唱えるのも結構だが、全国の山間部で「主要な仕事は、公共事業だけ」という地域が現に掃いて捨てるほどある以上、そこで吸収していた労働力をどのように振り分けていくかをまず考えるのが本来、政府の仕事のはずだ。(中略)
いまこうしている間にも、多重債務者が着実に量産されている。
201頁

我が身を省みて。
これまでなんとか自力でやりくりしながら過ごしてきました。
この先どうなるかはわかりませんが、せめて身の丈に合った生活を心がけないとなあ、とささやかながら思ったのでした。

関連する記事

『下流喰い』の書評で目に留まったものを挙げておきます。