こんな本読んだ〜『ウェブ2.0は夢か現実か?』

たまたま本屋を覗いていて「web2.0」と「佐々木俊尚」のキーワードに反応して速攻で購入、往復の電車の中で読んでみる。
ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が2004年から2006年までHotwiredで連載していたブログを新書1冊にまとめたもの。
2003年からしばらくInternet Watchで連載されていた「インターネット事件簿」以来佐々木俊尚氏の記事には注目していて、ウェブの近未来を危機感を込めて描いた『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)』は、ともすれば楽観的にすぎる『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)』とバランスをとるうえで必読の書だなあと思っていた。
この本は、大ざっぱに言ってしまうと、「TVや新聞といった既存のメディアは、ウェブを当たり前のように使いこなす全く新しい価値観をひっさげた世代に対抗できるのか」という内容。5年前なら、間違いなく『ウェブはメディアを殺すのか』みたいなタイトルが付いていただろう、そんな感じ。
以下、気になったところを箇条書きで。

  • 2006年にはネットの広告が雑誌のそれを追い抜こうとする勢いにあるにもかかわらず、ベストセラーが当たれば左うちわで食っていける出版社には危機感がないという話。このへんは最近CNETで書かれたエントリを読むとより具体的に描かれている。iTMSで曲がばら売りで買えるようになったように、ネット上ではパッケージ化されたコンテンツはブログのPermalinkよろしく解体されているのに、雑誌は相変わらずパッケージで売る思想から脱却できていない、という話。
  • Google Newsが登場したとき、見出しは著作権か?と論争になった件について。「著作権があるからといって、必ずしも無断使用を禁じなければならないわけではなく、著作権にはフェアユースという概念があって、守るだけでなく、みんなの共有財産として有効活用していかねばならないという面もある」Youtubeがまだまだアングラなサイトとしてしか認知されていない日本ではなかなか身近には実感しづらいなあ。地上波デジタル放送のコピーワンスが撤廃されるというこれからの展開にも注目しておこう。
  • 佐々木氏のライブドアの見方。ライブドアなどの新進企業を小型ほ乳類、フジテレビなどの放送業界を恐竜と喩え、「恐竜はいずれ滅びることを運命づけられているとはいえ、未だに過去の大恐竜時代の最後の残滓を謳歌している」とは痛烈な皮肉。ライブドアの誇る高い技術の話が世間にあまりに知られていないとも指摘。
  • 2005年にカカクコムのウェブサイトが改ざんされたとき、カカクコムが改ざんの手口を「セキュリティ上の理由で」公表しなかったことについて。「セキュリティ事故の責任を負うというのは、『情報の開示』以外の何物でもない。情報を開示して、二次被害を防ぐことこそが、セキュリティ事故の責任を持つ企業の行うべきことである」。侵入を許したカカクコムは被害者でもあるが、預かっている情報を漏洩させた意味では加害者でもある。顧客に対して納得のいく説明をするとは、どういうことだろうか。

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