こんな本読んだ〜『アメリカの宇宙戦略』

アメリカの宇宙戦略 (岩波新書)

アメリカの宇宙戦略 (岩波新書)

先週は冥王星が惑星の座から降りる話がホットだった。
科学に基づいた意思が政治の意思を上回ると賞賛する声が上がる一方で、冥王星アメリカの天文学者が発見した唯一の惑星だけに米国では複雑な感情があるという話も気になっていた。
ジムでのトレーニングを終えたあと電車に乗るときに本が鞄にないことに気づき、駅前の本屋でそれとなく引っかかった本を手にる。曰く『アメリカの宇宙戦略』。
アメリカのこれからの惑星探索や宇宙開拓の構想を展望する本かな、とぼんやり感じて往復の電車の中で一気に読んでみた。
内容は「冷戦前後の国際政治を、宇宙を肴に語る」感じ。ちょっとタイトルに釣られたかな。
冷戦下でソ連を牽制するためにアポロ計画が急ピッチで進められたように、宇宙開発はかつて国威発揚の象徴だったが、冷戦終結後国際政治の対立軸が対テロ・対核保有国と複雑化していく中で、アメリカの宇宙戦略は迷走している、というのがものすごくおおざっぱな要旨。
読んでいてなるほどと思った箇所を書き留めておく。

  • スペースシャトル「コロンビア」が空中分解を起こした事故の背景には、NASAの人員削減や技術のアウトソーシングが進み、組織が硬直化していたことが背景にあった。(23頁)
  • 冷戦末期に描かれたSDI(戦略防衛構想)は、実戦配備にはほど遠いものだったが当時のレーガン大統領は交渉を有利に進める材料として政治的に巧みに利用した。(67頁)
  • 温暖化を抑制する目標を定めた京都議定書にアメリカが批准していないのは、アメリカは条約など多国間の規制にとらわれずに行動の自由度を最大限に確保すべきとの信念(「束縛されないアメリカ」)があるからだ。(107頁)
  • 2001年9月11日以前、政権の中枢にテロ対策を軽視する空気があったことが、同時多発テロを招いたともいえる。(111頁)
  • アメリカは、中国を二重の意味で警戒している。急速に軍事力をつけ、宇宙開発の技術を独自に蓄積している点。国内のエネルギー需要が急増し石油輸入大国になることで、エネルギー戦略においてアメリカの国益と衝突する可能性が大きい点。(169頁)
  • ミサイル防衛の重要性を強調するあまり、アメリカの核軍縮はほとんど進んでいない。(192頁)