鉄道ジャーナル 2006年10月号

Wikipediaの鉄道ジャーナルの項目を読むと、取り扱う特集がマンネリ化していると手厳しいのだが、僕はほぼ毎年登場する「夜行列車」の特集を楽しみにしている。
今月号の特集は「夜行列車を考える」。
列車の乗車レポート(実際に列車に乗ってその様子を詳細にレポートする、鉄道ジャーナルの売り物ともいえる記事)は「富士」と「銀河」「ムーンライトえちご」。
今号の特集で読み返したいと思ったのは夜行列車の今後を考察した「夜行列車ものがたり」。1960年代の黎明期から現在の衰退期まで、5つの時期に分けて夜行列車の歩みを分析している。

第1期(1958-1964)
東京〜九州間長距離列車の新設期。20系客車登場。「あさかぜ」運転開始
第2期(1960年代後半)
東北、日本海縦貫線方面への拡大期。583系寝台電車登場。「はくつる」「日本海」「月光」運転開始
第3期(1970年代前半)
夜行急行列車の格上げによる寝台特急の増発期。24系客車登場。上下2段式寝台の24系25形登場。
第4期(1970年代後半〜1980年代)
夜行需要減退に伴う夜行輸送力の適正化の時期。国鉄経営難。
第5期(1987年国鉄分割民営化〜現在)
寝台列車の新しい方向性の示唆。「北斗星」「トワイライトエクスプレス」「カシオペア」「サンライズ」の登場。利用客の減った列車の整理・淘汰。新幹線の延伸や航空機が普及したことで、寝台特急は観光をコンセプトとする特殊なサービスになった。

手短に言えば、ビジネス客が離れ始めた1970年代後半から夜行列車の衰退は始まっていて、個室や座席車両の導入など工夫がなされたが流れを変えるには至らず結果的に安楽死への道を歩んでいる、ということ。
現在夜行列車の任に就いている車両は大半がいわゆる国鉄型車両*1。寝台用の客車の大半を占める24系の車齢も30年に近く、旅客会社が夜行列車のために客車を牽引する機関車を新たに開発する構想があるはずもない。
この記事も予言しているように、夜行列車に最後の転機があるとすれば、数年後の九州新幹線の全通であり、北陸新幹線の金沢延伸、北海道新幹線新函館開業が視野に入る時期だろう。その時期には国鉄型車両がいよいよ寿命を迎え、並行する在来線の経営は長野新幹線九州新幹線と同様第三セクターに経営分離される。そうなると、豪華路線、対若者といった明確なコンセプトのない列車はいよいよ淘汰されるのだろう。
夜行列車の特集以外には、鍋倉紀子氏の上海の生活を綴ったエッセイが読ませる記事に思えた。

*1:国鉄が分割・民営化される1987年以前に製造された車両を、国鉄型車両と呼んでいる