なぜjnaoya氏が気になるのか〜相矛盾した感情を書き出してみる

単なる嫌悪感だけではない感情

ここ数日、はてブbotをめぐって熱いエントリがあちこちで展開されているが、botはてブが支配されることに関して自分自身どう受け止めているか、単なる嫌悪感では片付けられないものがあることに気づいたので書き出してみたい。

jnaoyaへの密かな愛着

はてなスタッフの顔写真を合成したd:id:jnaoyaプロフィール画像を見てなんともグロテスクだなあと微笑みながらも、はてなユーザ好みのネタをよくもまあまんべんなく拾ってくるものだな、と感心すらしていた。
タグは99%[hatena]、コメントはないけどいち早く興味深い情報を拾ってくるセンスに惹かれ、ほどなく自分のはてブのお気に入りにはb:id:jnaoyaを登録。
Wordlinkにもjnaoya氏の印象をこう書いた。「なぜか興味深いブクマ」。
はてなブックマーカーランキングで自分のIDを放り込んでみると、一番影響受けているユーザはjnaoya。
だから、自分の書いたエントリにjnaoyaから初めてブクマされたときは「これで自分もいっぱしのはてなユーザーかな」と面映く思ったりもした。
fukkenさんのエントリから言葉を借りるなら、jnaoyaは、自分にとっては紛れもなく有能な情報収集エージェントだった。

湧き出してきた疑問

はてな人物辞典@Wikiで、jnaoyaを「単なるスクリプト」と指摘する声があがり始めた頃、自分もうすうす気づいてはいた。b:id:jnaoyaはどうやら生身の人間ではなさそうだということに。
そういうユーザが一つだけならば、まだネタのうちだと笑って済ませることができたかもしれない。ただここ数日そういうのが増えてきて、密かな愛着は次第に違和感、そして嫌悪へと転化された。
「これでいいの?」と湧き出す疑問とともに。

ブクマする手段に違和感を感じるのはなぜか

d:id:jnaoyaは、「正規表現」を使って、はてブに登録された特定の条件に当てはまるエントリを定期的にブクマしていると書いた。
b:id:jnaoyaを追っていけば、自分も含めてはてなユーザが食いつきそうな話題をホッテントリになる前にいち早く手に入れることができる。
はてなユーザの関心に限らず、任意のジャンルごと(自分の場合なら「山登り」か)に情報をクロールして面白そうなものをブクマしてくれるbotがいれば、あちこちのサイトを巡回して情報を収集する手間も省けるだろう。その意味でbotとコミュニティを共にするのは心地よくすらあるはずだ。
それでも、全てが自動化、機械化されることに一抹の割り切れなさ、寂しさを感じるのはなぜだろう?
正規表現でブクマを拾ってくるのはダメなのか。では生身の視線で拾ってくればそれでよいのか。
自分ははてなという動的でリキッドなウェブサービスに入り浸って、RSSリーダーやアンテナに毎日張り付いてより効率的に情報を漁る手段を追求しているのに、胸に渦巻くこの矛盾した感情は何だろうか?

はてブの獲得した役割と地位

ブックマーク数やコメントを共有することで、はてブは単なるメモ帳、備忘録を超えた位置付けを獲得しているように思う。
ブクマのコメントが、本人にとっては独り言でも、複数のユーザで共有することで時として他人の思考に影響を与えることがある。
「ああ、この人はこう考えているのか」「自分にはこんな考え方は思いつきもしなかったな」
他のユーザが記したコメントがきっかけで自分自身を浅はかで恥ずかしく思ったことなど、数え切れない。
はてブのコメント欄で議論が成り立つかと問われると自分には経験がないのでよくわからないけれど、はてブを単なる情報収集のツールとしてだけでなく、不完全ではあれ「ブックマーカー同士で、互いに生身の息遣いを感じていたい」とする需要が存在することは確実に言えると思う。

はてブツールであり、場でもある

はてブホッテントリを情報収集の基準にするユーザ(エントリの人気の目安とするブロガーやはてブニュースなどの二次サービスの作者)は、「人間味のないbotのブクマに価値などないに等しい」と嘆く。
はてブを情報収集の場として割り切るユーザは「botを有能な情報収集の水先案内人として活用していきたい」と期待する。
はてブをコミュニケーションの場として使いたいユーザは「全てを自動化して完璧にすると、はてブの醍醐味が失われてしまう」と立ち止まる。
ここ数日botを巡る議論が、botを困った存在だとみなしつつ「排除するのでなく共生を探る方向を目指している」のは、このような混沌の中で新たなものが生まれそうな予感を多くのはてブユーザがどこかで感じているからではないだろうか。
ユーザがはてブに求めているイメージって、一言でうまく言えないけれど、黎明期のYahooがディレクトリ型検索エンジン(ほぼ人力)の代表、Googleロボット型検索エンジンの代表(ほぼ自動)とするなら、ちょうどその中間。
インフラは全自動、味付けはなるべく人力、という半自動のコミュニティみたいな感じなのかな。