白山(市ノ瀬〜砂防新道ルート)2日目

コースタイム

天気:曇り。標高1700m以上はホワイトアウトで視界なし

  • 3:00 起床
  • 3:30 朝食(焼そば)
  • 4:30 市ノ瀬ビジターセンター 出発(830m)
  • 6:50-7:20 別当出合(1260m)
  • 7:50-8:05 別当出合吊橋を渡る
  • 10:10-10:25 甚之助ヒュッテ(1970m)
  • 11:00 甚之助ヒュッテから北東に尾根を進み、夏道と直交する地点
  • 11:30 弥陀ヶ原2345ピークから南南東に伸びる夏道尾根に合流(2200m)
  • 12:05 2345mケルンを確認
  • 12:34-13:10 室堂(2480m)
  • 15:26-15:40 別当出合吊橋を渡る(1260m)
  • 16:40-16:50 市ノ瀬ビジターセンター(830m)
  • 17:20 白峰ゲート
  • 17:45 白峰ゲート 出発
  • 23:00 京都市内(福井北〜敦賀 有料道路使用)

報告と所感

早めに3時起床。乾燥ニンニク+ソーセージ+シーチキンを盛り合わせた焼そばを流し込んで気合を入れて4:30出発。昨日姿が見えていた山頂は重い雲に覆われているようだ。橋を渡ったところからスキーを履く。林道でカットできそうな斜面はショートカット。それでも別当出合までは5.7km、2時間強を費やす。別当出合の吊橋は真ん中を慎重に渡る。下を見ないでおこうと意識すると脚が強ばってしまう。無心あるのみ。
橋を渡って中飯場への取り付きへ。別当谷沿いに歩くか尾根に直登するか逡巡する。雪崩れやすそうな谷沿いを避けて若干斜度は急だが尾根を直登。尾根に登りあげれれば快適なシール歩行だ。
飯場はいつの間にか通過。甚之助ヒュッテまでは別当覗に近づきすぎないように尾根を北東に進めばよい。ところが標高1700mを過ぎたあたりから急にガスが張り出して視界が白くなってきた。垂れ込める雲の中に潜りこんでしまったようだ。標高1800m付近で続いていたトレースが絶える。昨日の3人パーティはこのあたりで引き返したのだろう。ここからはコンパスと地形図を丹念に確認する作業の繰り返しとなる。
尾根が緩やかに広がってきたと感じられる標高1970m付近、甚之助ヒュッテはまだ雪の下に埋もれていた。ここから弥陀ヶ原までは黒ボコ方面に北北西にトラバースするのが夏道ルートだが、いかんせんトラバースする区間が長い。視界のない真っ白な状態で上で何が起ころうとしているのかわかないまま横断するのも心臓によくない。ならば、北東〜東北東に進み尾根通しに弥陀ヶ原を目指せば、尾根に登り上げるまで一部等高線が密な区間はあるが危険なトラバースの距離は短くできる。ヒュッテから明瞭な尾根を標高2100mまで北東方向に登り夏道を目指して東北東に進む。ここを越えれば尾根に合流すると思われる箇所、傾斜40度はあろうか。雪の層が剥がれて黄砂が剥き出しになっていた。こういうときは下が見えない方がかえって精神的には大胆になれるのだろうか。僕はツボ足で最短距離で直登、Sさんは速攻でシールで突破。この部分が一番嫌らしかった。
尾根に出てしまえばあとは弥陀ヶ原の2345ピークまでは南南東〜真北に進めばよい。このあたりからシュカブラが現れ始める。雪面も空も真っ白の状態だと思わぬくぼみに足を取られてヒヤリとする場面が出てくる。一瞬冷や汗をかいたのは右脚が着地せず膝をついてしまったところ、切れ落ちた斜面が大きく口を空けていたことがわかった場面。コンパスと地図を付き合わせて確認する作業をしつこいと思えるほどに繰り返していないと、人間の感覚なんてすぐに狂ってしまう。
弥陀ヶ原の南端の2345ピークの周辺の等高線付近を通過しているのだろうか、登ったあとわずかな下りがある。ケルンを発見して現在地が正しいことを確認。ここからは緩やかで雪崩の心配はない。ホワイトアウトの中でも正常に方向感覚を保つべく地図とコンパスを付き合わせる感覚はさらに頻繁になる。ここからはSさんのGPSで室堂までの距離と方位を確認のうえ先頭で進んでいただく。室堂はあと800m先にあるようだ。目印が確認できないときGPSがいかに心強い道具になってくれるかが実感される。緩い登りを超えてあと100m。少しずつ詰めてようやく小屋が姿を現した。
風はないが完全なホワイトアウト状態がずっと続いている。現在13時前、室堂の小屋で出発から約8時間。この状態ならば御前峰まではあと1時間強はかかる。山頂から15時に下山を始めるとなると、日没の18時までに下るならミスは許されない。沢筋を間違えた場合など、ビバークを余儀なくされる可能性が高い。さらに吹雪き出すとさらに時間がかかるだろう。焦りを抱えて下山することはできれば避けたかった。
Sさんと相談、山頂は見送り室堂で引き返すことにする。
行動食をたらふく食べ、下山に備える。
13:10、下山開始。残ったトレースを手がかりに2345ピーク付近まではシールを着けたまま下山する。10mと視界がないので頻繁に声を掛け合い互いが無事であることを何度も確認する。尾根からようやくシールを外し滑り始める。登りで嫌らしいと感じたトラバースは視界が幾ばくか晴れるのを待って一人ずつ一気に通過。甚之助ヒュッテ〜砂防新道方面へはSさんのGPSを頼りに滑り込む。
ガスが晴れ始めたのは標高1700mを切ったあたりから。重めの雪に苦労しつつ緩やかな斜面を一息つくように下っていく。遠くの山稜が望めたときなど思わず鼻唄が口をついて出てしまった。標高を下げた地点から見ると山稜の上は一律に重苦しい雲が垂れ込めていた。あの中を歩いていたということか。
別当出合の取り付きは別当谷方面を沢沿いに一気に通過。吊橋を渡り終えたあと、ワイヤーの一本が外れていることがわかり驚く。
ここでSさんにワックスを貸していただいたところ、林道までの滑りが信じられないほど楽だった。
市ノ瀬からはMTBにまたがるだけでよい。時折道端に生えるふきのとうを摘みながらあっという間に白峰ゲート着。
帰りは白峰総湯で一風呂浴びて、福井のカレーバイキングで空腹を満たす。

山行を終えて

先週の奥美濃の石徹白に引き続き、今回も天候に阻まれ途中での敗退となった。
10mもない視界の中での行動。特に弥陀ヶ原〜室堂の平原状地形や下る沢筋の選択などは自分の判断が正しいか自信が持てなかった。Sさんに持参いただいたGPSがなければ、前日すれ違ったパーティと同様甚之助ヒュッテの手前で行動を打ち切っていたに違いない。安心料と考えればGPSも決して高い買い物ではないのだろうか。
終日厳しい条件の中お付き合いいただいたSさんに感謝したい。

もろもろ反省

  • 行動用の飲料水を入れるペットボトルを車に置き忘れてしまった。Sさんの予備のボトルのお世話になってしまった。初歩的な凡ミス。
  • ガスコンの形式・メーカーを事前に確認しておくんだった。Snow PeakとEPIの互換性はない(IwataniとEPIは互換が効くけど)
  • そろそろGPSの導入を真剣に検討してもいいかもしれない。外国製のものを逆輸入するなら日本語化した製品の半値以下で買えるみたい(サポートは別だけど)。