積雪期遭難救助訓練
比良の堂満ルンゼで開かれた、京都府岳連の行事に参加させていただく。
訓練が行われたのは青ガレの手前。記憶の薄れないうちに簡単に概要を記しておく。
雪崩救助犬の捜索見学
イメージは阪神・淡路大震災でがれき下に埋まっている被災者を捜し出す際に注目を浴びた「災害救助犬」を雪崩に応用した感じ。
雪崩に埋まっている人間の発する「臭気」をかぎ取って、下に人がいることを知らせてくれるしくみ。
救助犬は臭気の出所で埋没者を判断するため、雪質の状態いかんによっては、必ずしも真下に人が埋まっていることを知らせてくれるわけではないことも併せて解説を受ける。
ヨーロッパでは、山岳レスキューにこういった雪崩救助犬を投入することがごく当たり前に行われているとのことであった。
北海道を除く本土では10頭近くが活躍しているらしい。
ツエルトを使った搬送
これは幅広く使うことがありそうなので、手順を記しておきたい。
- (今回の訓練は)捜索班・救出班・搬送班に分かれる。
- 捜索班が、埋没者のいる場所を特定する。
- 救出班か捜索班のいずれか最低1名が雪崩の監視を行う。残りのメンバーは埋没者のもとに向かう。
- (以下搬送班)ツエルトを広げる。
- 広げたツエルトの上に銀マットを敷く。
- 埋没者をツエルトに載せる。
- 埋没者の頭と足元に枕状の固形物を敷く。
- 埋没者の腕と脚をインクノットを交差した「手錠結び」で固定する。
- 埋没者のハーネスにメインザイルを連結し、上方で1名が支点を取って確保する。(緩い傾斜の場合はボディビレイでOK、傾斜が急な場合はエイト環の使用も考える)
- ツエルトで負傷者を身体の線に合わせて包む。
- 前後と中間合計4箇所程度丸めた「だんご」を作る。
- 作った「だんご」を、スリングを使ってインクノットで締める。(特に前後はほどけやすいので注意が必要)
- 長めのスリングを連結して負傷者を曳く準備をする
- リーダーの号令で進む。
- 搬送するルートによっては、適宜支点を確保しながら進む。
傾斜の緩い場所で行ったため困難は感じなかったが、より急峻な斜面などでは際だったチームプレイが求められるのではないだろうか。
特に捜索などを行う場合は、今回のように初対面の方と一緒にすることも多いと思われるので、少しでも経験のある者がイニシアティブを執ることが時間短縮の秘訣であると教えられる。
埋没体験
今後のことを考えて、「雪崩に埋まって救助される人」の役をさせてもらう。以下は埋まってみた感想。
- 講師から「暗いところや狭いところが苦手ではないですか?」と念押しされる。これは問題ない。
- 大人の身長と幅+αの穴にうつ伏せになり、埋まる。うつ伏せになって突き合わせる雪面には30cm四方の四角の切り出しがされており、そこから呼吸ができるようにはしてある。
- 全身を埋められると、目の前が真っ暗になる。うつ伏せになっていることはわかるが、方向感覚などは奪われてしまう。
- 身体の上から被せられる雪の深さはせいぜい50cm(新雪がやや固まった程度の雪質)程度なのだが、呼吸をするときに上に覆い被さる雪を重く邪魔なものに感じる。
- 救助役が慣れている方だったため、ゾンデ棒でなく脚を掻き出して無事発見される。
より深く、呼吸できる穴もない状態で雪崩に巻き込まれた場合、果たして身体が思うように動いてくれるだろうか?
ビーコン捜索
買ったはいいがほとんど実践できていないビーコン捜索の練習。
練習を重ねるか、あるいは実際使うことがないよう慎重に行動するのが一番のようだ。
- ビーコンの指し示す方向=埋没者の方向では必ずしもない。(結局、縦方向と横方向に交互にトレースし、発信音が大きくなるゾーンを見極めていくやり方が有効らしい。これをやるとなると人手が要りそうだ…)
- 個人的には、埋まってもいなかった方向をなぜビーコンが指し示したのかが気になっている。
- 生きている人間は柔らかいが、息絶えて冷たくなると当然硬くなる。こんなとき、ゾンデで生身の人間の感触を確かめる捜索方法は使えない。
収穫
14時には訓練が終わってしまったのだが、短い時間のなかでも気づかせてくれたことについて列記しておく。
- 冬山遊びが、想像以上にリスクをはらむ遊びであることがわかった。危険がつきものである故に、危険そのものを十分に知る必要があることもわかった。
- 単独でも、万が一の捜索時のことを考えるとビーコンは携帯した方がよいと思った。
- 前から意識はしているが、冬山の山行計画書ではメンバーの装備の特徴(ヤッケ上下・ブーツ・スキーなどの色やメーカー)は記しておくべきである。
- 気になる山岳会のウェブサイトの管理人さんとお話しできたことはささやかな喜びにつながった。(自分の山行記録が思わぬところで話題になっていて、わずかばかり驚いてしまった)
- FF車では、スタッドレスタイヤを履いていても深入りは禁物だった。(もう一台の4WDとの差をこれほどまでに見せつけられたことはなかった。氷化した登り坂でタイヤが空転してしまい集合時間に遅れてしまったのは反省したい)